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覇王の剣 ~魔術剣士と本の虫~  作者: 如月築志
難関試験【下】
30/31

試験結果

 「とりあえず、合格でいいでしょう。」

「榊教官!先程、御守君の星幽捕縛(アストラル・バインド)の行使により、徹君は試験中に彼の師匠からの援助を受けた事になりますが?」

「御守君の式の治療をしていなければ、菅原君が後ろから追撃を受ける事は無かったでしょう。ですから、それについては減点無し(ノーカン)で良いのでは無いでしょうか。」

「力を暴走していた様に見えましたが」

「正気に見えますよ?」

「私達の結界を勝手に壊してきました。」

「結界を壊すなとは指示していませんでしたしねぇ。こちらの落ち度でしょう。私も、()()()、こんなにも()()()()と結界を破られるとは思っていませんでした。徹君も私達の結界とは思わなかったのかもしれません。事前に私達が張る結界を壊さないように伝えておくべきでしたねぇ。」


榊と呼ばれた試験官の皮肉交じりのイントネーションに数人の神官と巫女が悔しそうに葉を食いしばり眼を伏せた。


「菅原君、その拘束も解いていいですよ。」


徹君が黒い淀みを水を沸騰させるように躍らせた。ボコボコという音と共に徹君を捉えていた白い雪玉が溶けていった。榊さんとその他の試験官の応酬はそこで止んだ。試験官達は徹君を凝視して後ずさりを始めた。中には剣や何かの札を構える者もいた。


「菅原君、その闇は君の意思で動かしているのですか?」

「自分の手足の様に自由に動くわけでは無いです。でも、呼びかけに応じたり、こちらの意思をくみ取った動きをしてくれます。」

「まるで生き物ですね。式として契約をしているのですか?」

「多分、俺とこの闇は契約の様な事をしてはいません。」

「憑りつかれているいるだけではないか!!危険だ!隔離・封印する必要がある!!」


試験官の1人の言葉に怒ったのか、闇が触手を数本伸ばして威嚇を始めた。それを見て、先程抜剣していなかった神官達も剣を構えた。


「本当にこちらの意図を理解しているのですね。徹君、私達を脅すのを止めるように言ってもらえますか?」


榊さんは他の神官や巫女と違って全く動じる事無く徹君と黒い淀みを見据えていた。徹君と黒い淀みを諭す彼の口には微笑みすら浮かんでいた。徹君は片手を挙げて黒い淀みの動きを制した。黒い淀みは、大人しく徹君の中へと帰っていった。


「それでは、今日のところは帰って良いですよ。月詠兎の怪我はこちらで治療いたしましょうか?」

「構わん。ワシの傷は大方治療が終わっておる。後は時間の経過の問題じゃ。榊、色々と手間をかけさせている様じゃの。大儀じゃった。」

「彼の白兎大兎がご子息にお褒めの言葉を頂けるとは有り難き事です。皆さん、お疲れさまでした。日はとっくに暮れていますので、お早く帰宅して下さい。気を付けてくださいね。」


榊さんはにっこり笑って僕等をねぎらうと、僕等に背を向けて同じように他の神官と巫女をせかし始めた。数人の神官と巫女が僕等の方へ走り出し、そのまま素通りしていった。金色の鎖で縛られた生首と白大蛇の胴体の周りで五芒星の魔法陣が浮かび上がり、紫色に輝き始めた。


「事後処理はこちらで行います。さあ、早くお帰りなさい。見るのも勉強になりますが、またと無い機会という訳ではありません。幽界に近いこの土地でならばすぐにでも高位の封印術にお目にかかれますよ。今日は疲れを癒して下さい。」

「南雲、行くよ。」


榊さんと徹君にせかされて、僕はその場を後にした。













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