助け合いの喜び
「よくワシらに当たらなかったのう。これも五縁を結ぶ月よ」
「多分、御守さんの水の結界付近の電位が低かったんだと思うよ。融雪剤の塩が溶け出して導電率も上がって電気を通しやすくなってたんだと思う。電気はより通りやすい方に流れるんだ。だから、」
「バシッ!!」シーナが僕の頬を枝で叩いた。
「最後まで言わせろと言っておるではないか!馬鹿者!」
「痛い!ごめんなさい。」
「難しくてよく分からなかった。南雲君って、理科得意なんだね。」
「う、うん!そうなんだ!」
御守さんの称賛に僕の心は躍った。無数の白蛇達はとどまる事を知らず、次々と湧いてきていた。水の結界を覆うように結界の表面を泳いでいた。普通なら正気を失ってもおかしくない状況だった。しかし、僕は一種の興奮状態にあったのか、今自分がいる状況が楽しくてしょうがなかった。
「南雲!にやけていないで雷撃を放て!」
「はい!マリモ!結界外の一点に電撃を充填するよ!答えよ先人の遺志、雷撃充填!」
僕は一番蛇が固まっている方を指さして叫ぶと、結界外に魔法陣が浮かび上がった。そこにマリモが紫の閃光を放った。電撃が結界にぶつかると、電撃は結界外の魔法陣にたどりつくことなく、結界に紫の放射線が走った。結界にへばりついていた蛇が筋肉の収縮を起こして宙に跳ね飛ばされた。
「す、すごい!」
「ま、まぐれじゃろ?これも五縁を」
「南雲君!?狙ったの!?」
「何度も言わせるな!何故、最後まで言わせてくれぬのか?これも、」
「そうだよ。魔法陣よりも、結界の電位の方が低いんだ。電位が低いところから電位が高いところには電撃は流れないんだ!意外と一般人の知識って、役に立つんだね!今、僕、人生で一番楽しいよ!」
「狙ってやったんだ。すごいね。なら、もう一度同じことやってくれる?」
そういうと御守さんは手を優雅に動かし始めた。その姿はまるで踊りを舞っている様で、思わず僕はみとれてしまっていた。彼女の腕が舞うのに合わせて水の結界が波打ち、辺りの白蛇達を巻き込んでいった。
「南雲君!!今!」
「答えよ先人の遺志!!雷撃充填!」
御守さんの合図で、僕はマリモに雷撃を放たせた。御守さんの結界が捉えた白蛇がは全て弾け飛んで一掃された。
「やったね!」
「うん!」
御守さんが満面の笑みで僕へ黄色い声をかけた。自分の得意な事を友達との、もっと言えば、学校中の憧れマドンナである御守さんとの共同作業で役立てた事で僕の胸は興奮で鳴り止まなかった。
「まだじゃ!集中力を切らすなよ!?木偶供!戦いの行方から決して目を逸らすな!」
シーナの声で僕達が徹君に目をやると、白大蛇の2つあった頭が既に1つになっていた。落ちた1つの頭がこっちをじっと見ていているようで気持ちが悪かった。徹君は残りの1つの首を落とそうとやっきになっていた。
【編集履歴】
2019/01/24
活動記録にも書いていますが、初めの部からこの部まで部タイトルを「章タイトル+数字から」変更しています。




