僕が知らない世界へ2
僕は歩き慣れない道を徹君について歩いていった。彼君は袋小路に入って、そのまま壁に向かって歩いていく。
「行き止まりだよ?。」
「いいんだよ。神界への入り口なんだ。」
「異界?神隠し伝説知ってるやろ?子どもが神様に連れていかれる場所。神様が住まう俺達がいる浮世とは少し外れた異界。結界の一種で、その中で最も強力なものが神に創られた神界。なんだってさ。」
徹君は壁の目の前で立ち止まって言った。
「どうやって入るの?」
「中の住人に導かれるか、無理やり入るかだね。多分、御守がお前の事についても話を通してくれてるはずだから、南雲も通れるはず。」
徹君が僕に語り掛けた。
「そうなんだ。無理やり入ったら、どうなるの?」
「分からん。どうなるんだろうな。弾き飛ばされるのか、世界の狭間に閉じ込められるのか、異界に取り込まれて吸収されるのか、そんなとこじゃない?」
ふと思いついた僕の問いに対して、徹君は怖いことを平然と言った。それを聞いて、僕の膝が震えだした。
「ごめん。脅かすつもりは無かったんだ。」
僕の怯えた姿を見た徹君はそう言って、手を差し出した。
「多分、俺と一緒なら大丈夫。」
徹君は僕を見て、優しく微笑んだ。僕は唾を飲み込んで頷き、彼が差し出した手を握った。徹君が歩き始めた。彼の足が、顔が壁に触れると、触れた所から壁に波面が広がり始めた。彼の手に引かれて僕の足は進み、すぐに僕の手も壁に触れた。触れた先から半液体状の何かが僕を確かめるように僕を取り込み始めた。触れた事の無い感触に僕は驚いて目をつむってしまった。体表中を何かが優しく撫でる様に通り過ぎていった。目を開けると、そこには、木や林、森、辺り一面の自然が広がっていた。僕は、それを呆然と見つめていた。




