nient altro che noi
#百合小説版深夜の創作60分一本勝負
作品。「指輪」がテーマです。
初めてのことに手が震える。白くて細い綺麗な指を、銀色の輪が滑っていく。
なんとも言えない緊張感。目の前の彼女も同じらしい。
「お揃いのもの、欲しくて。恋人っぽいのが良いなって思ったけん、これにしたんよ」
瞬間、ふわりと甘い香りと金色の髪が鼻をくすぐる。
「恋葉! 嬉しいです!」
無邪気に喜んでくれるエヴァちゃんに、ほんの少しだけ罪悪感を感じる。
交際1年記念日。特別なことがしたくて、初めてアルバイトをした。
選んだ理由に嘘は無いけど、指輪の贈り物ってなんとなく、相手を縛れるような気がした。それが1番の理由。
お人形さんのように可愛いウチの恋人は、相変わらず女の子が好きで、女の子とキスするのが好きだ。けど、恋人はウチだけ。随分慣れたとはいえ嫉妬はする。
中にはきっと、藤宮恋葉っていう恋人がいることを知らない子だっておると思うけど、この指輪で少しでも知られれば。牽制になればいい。
「エヴァちゃん、これペアリングなんよ。これがウチの分」
初めてのお給料で、できるだけ良いものをと悩んで買った。内側には、縛る言葉と、名前。
「ウチにもつけてくれる?」
同じデザインの指輪を手渡す。
「もちろん!」
うっとりと指輪を見つめるエヴァちゃんが内側の文字に気付いた。
「これ、英語じゃない。どういう意味ですの?」
「それは……秘密」
知られないように調べて他の言語にしたもん。いずれは分かるだろうけど。
それ以上は何も言わずに、ウチの指にリングを通してくれた。
指にはまった2つの指輪を見てほぅ、と息をつく。
「エヴァちゃん、大好き」
「私もですわ、恋葉」
指輪のついた手をきゅっと握って、そっと唇を重ねた。
恋葉ちゃんもどってこーい