15話 騎士の誓い
デューイ・オスター様
助けてください。
いつもの場所で待っています。
朝、トイレでその文字を見てから、俺は全力で駆けだした。
「センパイ!」
倉庫の扉をパーンっと開けると、センパイが椅子に座って驚いた顔でこちらを見上げている。
「やぁ。早いな……」
「助けてって何!?」
「うん。まぁ、あれだ……ああ書いていれば早く来てくれると思って書いたのだが、俺ではないか……」
俺ではない?
「センパイが危ないわけじゃないってこと」
「そうだ」
よかったと大きく息を吐いてから、椅子に座った。
「すまない。大げさだった」
「まぁいいけど、ミラは?」
「ミラはいい」
センパイはそう言ってから、読んでいた本を畳んで顔を上げた。静かなその視線に自然に佇まいを正す。
「今からする話は、俺のことなど気にせずに、デューイ自身で判断して欲しい。軽々しく関わっていい問題ではない」
突然なんの話かわからないが、真剣にこちらを見つめるセンパイに「わかった」と頷いた。
「話というのは他でもない、アリスティア・ライラントのことだ」
センパイが調べると言ってからまだ一週間も経っていない。
「何かわかったのか?」
センパイは何かを思い出したように、顔をひどくゆがめていた。
「信じられないような話だ。気分が悪い……」
そうつぶやいてからこちらを見る。
「結論から言うと、アリスティア・ライラントはたった一人でライラント領を守っている」
「は……? えっと、一人でってどういう――」
一人でライラント領を守る。そう聞こえたような気がするけど、意味がわからなかった。
「言葉の通りだ。ツヴェルク伯爵家筆頭に、ライラント領下の全男爵家、および騎士団はその任務を放棄している」
個々の単語の意味がわからないわけじゃない。だけど言葉の意味が理解できない。
『騎士団が任務を放棄している』――その言葉だけが頭の中をぐるぐると回った。
「任務の放棄」
「領の守護だ。ライラント領は王都とは違って国境に面している。国境沿いに面している領は、国外からやってくる魔物を日々退治しなければならない。その任務のことだ」
そんなことは知っている。この国の住人としてそんなことは当たり前だ。そして、そのために俺たち魔術師は存在している。
「守護任務を放棄って……何でそんなことを?」
さっきから常識外の言葉を聞き過ぎて意味がわからない。
「詳細までは俺もよく分かっていないが、ライラント領の領主――アリスティアの父親と母親は病で2年前に亡くなったそうだ。嫡男マルセル・ライラントは現在10歳。しかも現在病で寝込んでいるらしい。恐らくよくある後継者争いで、ライラント侯爵家とツヴェルク伯爵家が揉めたのだろう」
「揉める……?」
「ライラント侯爵家のうち、ツヴェルク伯爵以上の位を持つのはアリスティアとマルセルのみ。ツヴェルク伯爵からすれば、今にも死にそうなマルセルよりも、アリスティアと結婚して自分が継ぐ方が早い。実際にツヴェルク伯爵は、侯爵家を継ぐものとして問題がないレベルの魔術師だ」
センパイが言っている意味はわかる。わかるけど、理屈として分かるだけで、感情としては理解できない。
「後継者で揉めているとして、何でライラント嬢が一人で領を守ることになるんだ? 騎士団は何をやっている……」
俺は何か理由を教えて欲しかった。騎士団が己の主を守らないその理由を。
「それは俺も知らん。だが、事実として騎士団は動いていないらしい」
センパイから目を逸らしながら、俺は心を静めるために自分の腰に差している木刀に触れた。
「デューイ。俺はこれまでこのことを知らなかった。だけど、調べるとすぐに――こちらが驚くほどの量の情報が出てきた。恐らく情報を止めるものと、恣意的に流しているものがいると思う……それが誰かは分からないが、アリスティアはこれまで学内でこのことを公言することはなかったことから、アリスティア・ライラントはこのことを広めたくはないのだろう」
ライラント嬢はいつも寝ている。いつ見ても寝ていて、それに対して彼女が何か弁解をすることはない。悪意のある噂を流されても、真実を伝えてそれを正そうとはしない。
「デューイ。どうする? 俺のことは気にせずに、デューイがどうしたいか言ってくれ」
俺の正義感だけでどうこうなる話ではないことは、俺だってわかる。それでも――
「気にいらねぇ……俺ではわかんない理由で騎士団は何もしていないのかもしれないけど、それが何だって言うんだ。それのどこが騎士だ」
俺がはき出した言葉に、センパイはこの話をする前から俺の言葉など予想していたのように――諦めたような顔をしていた。
「デューイ。俺はライラント侯爵家のスクロールが見たい。それと引き替えにアリスティアに協力することは可能だ。ただし、俺が協力したからと言って、アリスティア側に利点は少ない」
センパイの書くスクロールは今は俺しか使えない。
だから、センパイは『俺自身で』判断してくれと言ったのか。
「わかった。俺も協力する」
俺がそう言うと、センパイは困ったように頭を掻いた。
「説明の順番を間違えたかもしれないが、仮にアリスティアがそれを了承したとして、デューイは何を貰うつもりだ。それをちゃんと考えておくようにと言いたくて、アリスティアにこの話を持ちかける前に、先に話しておいた」
「何を……?」
何で俺が貰うんだろう。
「別に何もいらない」
「おい、デューイ――」
「センパイ。俺はこの国の騎士だ。騎士家を継ぐ者ではないかもしれないけど、俺はそう思っている。俺が国を守るのに理由はいらない」
センパイは目を丸くして俺を見てから、目元を押さえた。
「俺では怪しすぎて裏を疑うような話だが、この世界ではこれが常識なのかもしれない。アリスティアに判断を任せよう……」
センパイはそうつぶやいてから立ち上がった。
「ではお姫様を呼びに行くか」
「えっ、今から!?」
「アリスティアは放課後は守護任務だ」
ライラント嬢は、下校間近になると起きて窓の外をよく眺めている。
このためかと――思い詰めたようなその横顔の理由が、今日やっとわかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
学術学院の制服を着たセンパイが俺の前をすたすたと歩いている。
「センパイ、今授業中」
小声でそう話しかけても、センパイの歩みは緩まない。
「人が少なくて歩きやすいな」
「そうじゃなくて」
「わかってはいるが、休み時間でもどうせ目立つぞ。授業中の方がまだ緊急性が出て、むしろ誤魔化しやすい。先生にはあとで俺から説明しておこう」
センパイは迷いなく俺の教室まで歩いて、ためらいなく扉を開けた。
「急に何ですか、あなたは!」
そう叫ぶ国語の先生の声を聞きながら、俺もこそこそセンパイの後ろから教室に入った。「あれ、デューイだ」と皆の視線が俺とセンパイに集中する。
そんな中、センパイはまっすぐ、今日も机で突っ伏す銀色の頭に向かっていった。
「アリスティア・ライラント。起きろ」
センパイの声に、ライラント嬢はのろのろと顔を上げた。
「私はロデリック・アーチモンド。ライラント侯爵家について確認事項があると、お呼びが来ている。急いで準備をして私に付いて来なさい」
ぼんやりとセンパイのことを見ていたライラント嬢の視点が徐々にはっきりして、最後は少し喉が震えているのが見えた。ライラント嬢が荷物を持って、静かに立ち上がる。
「授業中に失礼をいたしました」
そう言ってセンパイは何事もなかったかのように教室を出た。
俺の前をライラント嬢が歩いている。不思議な光景だ。
そのまま学院の裏口から出て、倉庫に向かう道の途中――
「どこに向かうのですか?」
ライラント嬢の声に、前を歩いていたセンパイが振り返る。
「アリスティア・ライラント。先ほどの話は嘘だ」
ライラント嬢の足が止まった。
「嘘?」
「嘘だ。帰ってもいいが、俺の話は聞く価値があると思うぞ。ライラント領の守護についての件だ」
脅しのようなセンパイの言葉に、ライラント嬢はしばらく無言でセンパイを見上げていた。
「いいわ。聞きましょう」
その言葉のあと、再び3人で倉庫に向かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「魔術研究部……?」
ライラント嬢が倉庫に掛かった看板を見上げている。
「俺とデューイは、ここに所属している」
「デューイ?」
ライラント嬢はそうつぶやいて、もしかしてこの人かしらといった顔で俺を見た。やはり俺の名前は知らなかったのかと、俺は心の中で悲しく笑った。
「まぁ、入ってくれ。本当に何もないが」
ライラント嬢は入り口で数秒立ち止まってから、中に進んだ。そして、本棚と大きな箱しかないこの部屋をしばらく見回してから、迷いなくセンパイの前に座った。俺はセンパイの隣に座る。
「私に何の話かしら?」
ライラント嬢はこちらを睨むような目で見ている。その目に、センパイはひるむことな
くその目を見つめていた。
「別に悪い話ではない。俺たちは君の事情を大体知っているから、先にこちらの説明をしよう」
そう言ってセンパイは立ち上がった。そしていつものように部屋の隅にある大きな箱に手を突っ込んで、ごそごそと何かを漁っている。
「デューイ」
そう言って、こちらにひょいと投げられたのは、まぁ――スクロールだ。そして、
「頼む」
とセンパイはいつものようにそう一言だけ言った。
俺は慣れているけれど、ライラント嬢は俺の手元を見てぽかんとしている。俺の手元にあるスクロール――水の魔方陣の描かれたスクロールを発動させる前に、いつも使っているバケツを用意して足元に置いた。顔を上げてセンパイを見ると頷かれたので、いつものように左手に持ったスクロールに力を込める。
「えっ?」
そんなかわいい女子の声を耳が受け取ったときに、俺の左手に現れたのは水の魔方陣。それをバケツの上に移動させて、とんとんと叩くと、水球がバシャンとバケツの中に落ちた。
「水の魔法……?」
首をかしげながらライラント嬢はそうつぶやいて、そのあと俺をじっと見た。
「えっと」
混乱している彼女に、俺が順を追って説明しようとしたとき――
「俺たちは魔法を作っている」
センパイは楽しそうに、ライラント嬢の混乱を加速させていた。
「魔法を作っている……?」
「そうだ」
ライラント嬢は俺の左手にあるスクロールを見てから笑った。
「そんなのあり得ない」
至って普通の反応をしているライラント嬢を、センパイは笑顔で見つめてから、箱の中からバサッと紙束を取り出して、机の上に置いた。
「アリスティア・ライラント。一つ選ぶといい」
ライラント嬢は困惑した顔で、言われた通りその紙束の中から一本のスクロールを選んだ。
「デューイ」
当然のように続くその指令に、うげっとセンパイを見る。
「センパイ。これ何だよ」
センパイが持ってきたこの紙束は、過去の失敗作だ。しかも失敗作の中でも魔法は発動する方だから、余計にたちが悪い。
センパイはスクロールを広げて、しげしげとその中を確認している。わからない中から選ばせたのかよ。
「これは、あれだ。発動直後に水蒸気が広がるやつだ」
あぁ……あの『もわっと』するやつか。まだ危険ではないものを選んでくれたことに感謝しながら立ち上がる。
「行こう」
「どこに?」
俺の言葉にライラント嬢が座ったまま俺を見上げていた。俺もセンパイと同じようなことをしていることに気がついて、慌てて説明をする。
「大丈夫だと思うけど、室内だと危ないかもしれないから外に出る。すぐ目の前だ」
ライラント嬢はよくわかっていなさそうな顔で立ち上がった。素直に俺に付いてくる彼女に少し驚きながら、扉を開いて外に出た。
明るい空の色に驚きながら、振り返る。
「少し離れて」
二人が俺からかなり遠くに立つのを悲しく思いながら確認して、スクロールを持った。
魔方陣を生成して、限界まで腕を伸ばして、杖でそっと輝く魔方陣を叩く。
前方に現れたもわっとする熱気に、慌てて下がった。だけどこの魔法はこれだけだ。今日は明るいからだろうか。以前ほどの白い煙は見えなかった。
無事に終わったと、胸をなで下ろしてから二人のもとに戻る。
「さっきのは何?」
ライラント嬢に睨むように聞かれて、俺は戸惑った。
「何って……魔法」
「魔法? あれが魔法?」
「すまないが、さっきのは失敗作だ。水と火の魔法を組み合わせてみたのだが、水が少なすぎて、その上火の勢いが強すぎたらしい」
センパイはそう真面目に分析した結果を教えてくれているが、ライラント嬢が聞きたいのはそこではないと思う。
「組み合わせた……?」
「まだ理解してくれないようだが、始めに見せた水のスクロールも、さっき見せた魔法のスクロールもすべて俺が描いた」
「描いた……」
見せた方が早そうだなと、センパイは倉庫に引き返した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「理解したか」
「信じられない」
センパイが描き上げたスクロールの前で、ライラント嬢は首を振っていた。そして、急にスクロールに手を伸ばして、拾い上げた。
「待て」
センパイが止める声も聞かずに、ライラント嬢はスクロールに魔素を送った――だが、ミラと同じように途中で立ち消えた。
「火のスクロールなのに、重いのね」
「それはデューイ用に調整してある。他の人は使えない」
ライラント嬢は何度かスクロールを試してから、諦めたかのように机の上に置いた。
そして俺を見る。その目に『やれ』と命令されている気がして、俺はスクロールを手に取った。これは俺のためのスクロールだ。革手袋を付けた左手に軽く力を込めると、きれいに黄金色の魔方陣が浮かびあがった。その魔方陣に杖を伸ばそうとしたとき、横から手が伸びる。
ライラント嬢は魔方陣を素手で掴んで、その手から何のためらいもなく火の玉を出した。軽く手を振りながら、ライラント嬢の青い目がこちらをのぞき込む。
「信じるわ」
そして、席に座ってから俺たちを見上げる。
「信じましょう」
センパイが椅子に座ったのを見て、俺も慌てて元の席に座った。
「俺の要求は1つだ。ライラント侯爵家所有のスクロールを見せて欲しい」
ライラント嬢はセンパイの顔をじっと見つめてから、微笑んだ。
「普通だったら、『何を言っているのかしら』と切り捨てるところだけど、あなたは私に何をしてくれるの?」
顔はかわいい笑顔だけど、その冷ややかな声にセンパイの顔を伺うと、センパイは真剣な表情でライラント嬢に相対していた。
「アリスティア・ライラント。侯爵家の継承問題が解決するまで、私は君に協力しよう」
センパイの言葉に、先ほどまで微笑んでいたライラント嬢の顔が硬直する。
「その左腕はどうした。怪我をしているのか?」
ライラント嬢の左腕には、包帯が巻かれている。ライラント嬢はそれに視線を投げてから、顔を戻した。
「魔術師ではないあなたに一体何ができるって言うの?」
何か憎しみを感じるようなその声に驚きながらも、存在を忘れられているらしい俺はセンパイの隣で小さく手を挙げた。
「俺は一応魔術師です」
俺の言葉に二人の視線が集中する。
「デューイ待て」
センパイは驚いた顔で俺にそう指示をしてから、ライラント嬢の方を向いた。
「アリスティア・ライラント。さきほど見せた通り、俺は新しい魔法を生み出す研究をしている。俺に協力してくれれば、対魔物戦に特化した魔法開発に着手しよう」
「魔物を簡単に倒せるようになるの?」
「すまないが、俺は魔物すら見たことがないから、今の段階では何とも言えない」
「そう……」
ライラント嬢は沈んだ声でつぶやいてから、机の上に置いた自分の手を見つめている。
「あなたは私の事情をある程度知っているようだけれど、そんな確証のないことでライラント侯爵家の家宝であるスクロールを見せることはできない」
「死ぬつもりなのか?」
「私は、死なない!」
ライラント嬢はそう叫んでから、口をきゅっと結んだ。
何かに必死に抵抗するようなその顔に、俺は黙っていられなかった。
「あのさ、魔物ってどのくらいの攻撃で死ぬんだ?」
俺の声にライラント嬢は俺を睨むように見た。その視線の強さに少したじろぐ。
「小型のだったら、火の魔法でも死ぬわ」
「だったら爆裂のスクロールだったらそれなりに役には立つんじゃないか? 俺は騎士家出身で体は鍛えているから、邪魔にはならないはずだ。盾として使ってくれ」
「盾……?」
「デューイ!」
怒ったような顔で俺を止めるセンパイに、俺は笑いかけた。
「なぁ、センパイ。やっぱり俺、センパイには感謝してるんだ。あの契約書の俺の願いは叶ったから、次はセンパイだろ?」
契約書の内容が何だったか俺はもうさっぱり覚えていないけど、あの契約は破棄できるものではなかったはずだ。
「俺はセンパイに協力するよ」
そうセンパイに宣言してから、センパイが何か言い返す前にライラント嬢の方を向く。その青い目とまっすぐ視線を合わせてから、ライラント嬢にも俺が決めたことを伝える。
「俺は国を守る騎士だ。国を守るのに必要なら好きに使ってくれ」
目の前で聞こえていないはずはないと思うが、そう疑いたくなるほどライラント嬢は無言だった。
「そんなはずないじゃない……」
震える声に、何のことだと聞こうとしたときに――
「あなたは何が欲しいの? 言いなさい!」
急に激怒し始めたライラント嬢に慌てるが、確かに俺はまだ説明していなかったかもしれない。
「センパイにスクロールを見せてくれれば、俺の方は何もいらない」
「何もいらないって、命がかかっているのにそんなことあるわけがないじゃない! 一体何を――」
俺が立ち上がると、ライラント嬢の声が止んだ。
「命がかかることを一人でやっている人に言われたくはない」
そう言ってから、膝を突いた。
「センパイにライラント侯爵家が持っているスクロールを見せてくれ。俺の願いはそれだけで、俺の方は何もいらない」
なぜ俺はこんなにも皆から怒られているんだと、理不尽に思いながらも、腰のおもちゃを抜く。俺の本当の剣は、騎士としてはあるまじきことだが自室だ。だから、これしかない。
これは本物だと思いながら、剣の柄を銀色の髪の少女に差し出した。
「剣に誓いを」
本物でなければ信じてもらえないのかと、静かな空気の中顔を上げると、綺麗な青い瞳は俺だけを見つめていた。その瞳に囚われ続けていると、目の前の少女の頬を涙が伝い落ちるのが見えた。
「……受けましょう」
震える手がこちらに近づいて、俺の手から慎重に剣を受け取った。そして、柔らかそうな唇を柄に少し押し当てたあと、剣を俺に返した。
両手で恭しく受け取ってから、腰に戻す。
俺が立ち上がると、ライラント嬢は俺から目を逸らすように斜め下を向いた。
俺たちから顔を隠して必死に頑張っているのはわかるけれど、服の袖で目元を何度も、何度も拭っていた。