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鬱々ショート  作者: 鬱々とっちゃん
7/15

鬱々ショート 川原にて

僕は中学2年生の男子です。これは、僕が小学校5年生の時に体験したおかしな話なのですが。


その日は、同じクラスの友達二人と歩いて下校中に、川原でちょっと変な人が座っているのを見つけました。


その人は、白いワンピースを着て、腰まである黒い長い髪の毛と細い体つきの人でした。つばの付いた大きな白い帽子の下の顔は、黒いサングラスと大きなマスクで覆われています。


どうやら、その人はグスグスと泣きながら川を見つめている様でした。


見るからに訳ありのその人を見て、僕たちはあの人は何者なんだろう?と疑問に思いました。


僕は、たぶん別れた恋人の事を思い出して泣いているんだろう。恥ずかしくて、泣き顔が見られたくないから顔を隠しているんだよ。と言いました。


友達のAは、あの人はオカマで、マスクの下は青髭だらけ。何故、自分が男に産まれてしまったんだろうと、悲劇を嘆いてるんだよ!と無邪気に笑いながら言いました。


友達のBは、あの人は病気で余命宣告を受けたんだよ。だから、あんなに細い体なんだ。残りの人生をどう生きようか迷っているんだよ。と言いました。


確かに3人とも有りそうで無さそうなシチュエーションなので、あの川原で泣いている人に更に興味がわきました。


僕たちは実際に声をかけて確かめることにしました。


「あの、大丈夫ですか?どうしてそんなに泣いているんです?」

僕が始めに声をかけました。


続いてAが

「このハンカチ、使って下さい。」とハンカチを差し出し


Bが妙に大人ぶった喋り方で、

「良ければ、泣いてる事情を僕たちに教えてくれませんか?」

と言いました。


すると、泣いている人はグスングスンとすすりながら

「あら、、、優しいのね。ありがとう、でも大丈夫です、、、」

とハンカチを受け取らずに答えました。


「?」


なんだろう、その人の話し方は女の人のようでしたが、とても声がしゃがれていて、かすれ声のまるでお婆さんのような声でした。


もしかして、この人。お爺さんが先に旅立ってしまい悲しみにくれる未亡人お婆さんかも?そう第4案が浮かんだとき。


泣いている人がゆっくりと立ち上がって、あのかすれた声で慎重に喋り始めました。


「実は、私。、、、5年間付き合っていた人と先月、婚約が決まって。」


もしかして、僕の別れた恋人案採用かな?え、でも婚約って?この人、一体何歳なんだろう?僕は、ちょっとわくわくして聞いてました。それから、泣いている人はすすり泣きながら話を続けました。


「幸せな1ヶ月でしたが、先週、婚約者が浮気している事に気づいてしまって。婚約が破談になって。、、、私、思い詰めて。昨日、この川で入水自殺をしたんです。」

泣いている人の口調はとても悲しそうでした、そして溜息をひとつ付いた後、更に話を続けました。


「でも、その後、気が付いたら何故か今日の朝で、自分の部屋のベットの上で眠っていたんです。あぁ、昨日、自殺した事は全てが夢だったんだって。今日は死にたいなんて思わないけど、嫌な気分を晴らすために、また、この川原へ来てみようかなって。思ったのですが、、、」

そこから、泣いている人は黙ってしまいました。


やっぱり、僕の予想した通り。別れた恋人のことを思い出して泣いてる人だったんだ。僕は、悲しい話だなぁと思いつつ、ちょっとだけ予想が当たった事に得意な気持ちになりました。


AとBは深刻な顔をしつつ、自分達の予想が外れて、残念そうにうなだれてました。


「あの、大人の事情は、よく分からないですけど。無事に生きててよかったですね。」僕は、見知らぬ大人の人を励ます事なんて初めてだったので緊張したのですが、泣いてる人に声をかけました。何だか、少し大人びた気持ちになりました。


泣いてる人は、少し震えているようでした。そして、声を潜めてこう言ったのです。

「いいえ、私。朝、目が覚めたときに自分の体に異常がないか確かめたんです、、、。私の心臓は、、、止まってました。」


ドクン、僕は、気味の悪い話に心臓の鼓動がおおきくなりました。AもBも顔が青ざめています。


「他に、喉が潰れて、顔が滅茶苦茶な状態になっていました。」


泣いてる人がマスクとサングラスに手を掛け、自分の顔を見せようとしたその時。


Aが

「うわあああーーーーーっ!!」

と叫びながら持っていたハンカチを投げつけ物凄い勢いで走り出しました。


僕とBもAの勢いにつられて

「うわあああーーーーーっ!!!!」

と恐怖を振り払うように全力で走ってその場から逃げ出しました。


どれくらい全力で走ったか分かりませんが、力尽きて立ち止まったのは数百メートル過ぎた辺りだと思います。


ハァハァ、、、


乱れた息で後ろを振り返ると、あの泣いてた人は、もう川原にはいませんでした。


それから、三年がたちましたが、あの川で自殺をした人がいるという話は聞きません。あの泣いていた女の人は一体どうなったんだろうか。時々、ふと、思い出します。







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