鬱々ショート 猫の神様
昨日、神社にお参りに行ったら猫が境内で丸くなっていた。
50を越えたおっさんの俺だが。可愛くてふわふわしたものにはめっぽう弱い。
ゴロゴロゴロゴロ。さ、おいで。こっちおいでニャンこちゃん。猫なで声でそうささやくと猫は人懐っこく俺の前まで来てくれた。
チリーン、チリーン猫の首輪についた鈴がなっている。
何て可愛いんだ!この子はきっと神の使いに違いない。そう思って猫を見つめると。
「お前、俺のこと見えてるのか?」と突然、猫が喋りだした。
え?驚いた俺は呆気に取られていた。すると、猫は俺に説明した。
どうもこの猫は、猫の世界の最上神で滅多に人の目にうつる事は無いらしい。神の世界では人に見られたら何か1つ願いを叶える事がルールらしかった。
「お前の願いは、何だ?」
猫は僕に問い掛けるが、たった1つの願いとなるとどうにも、思い浮かばない。
「お前の願いは、何だ?」
再び猫に問いかけられたが何も思い浮かばなかった。
「願い事を決めるまで。それまでちょっとまっててくれ」
そう言うと、俺はハッと思いついた。この猫神様を俺のペットにすれば、可愛いねこちゃんと一緒に暮らせる上に願い事を叶えてもらい放題じゃないか!よし、これをお願いしよう。
「よし、願い事が決まったぞ!」
俺がそう口にしたとたん、猫はゆっくりと消え始めている。猫はこう言った。
「お前の願いが決まるまで、ちょっとまってやったぞ。これで願いを叶えたな。」
そんな、ばかな?
猫が消えた後。俺は神社の賽銭箱に有り金を全部投げ込み、またあの猫に会えるようにお祈りしたが、あの猫に出会えることは一度もなかった。




