鬱々ショート ミノムシ姫
ミノムシっていう蛾の生態って知ってる?オスは成虫になったら口を持たずに飛び回り。メスの臭いをかぎ分けると交尾するためにメスのミノに寄り付くの。そして、交尾を終えるとすぐに死んでいくのが運命。
一方、メスは成虫になっても、ミノから出ることはなく、交尾の時期になると、特殊な臭いを発してオスを呼び寄せミノを被ったまま交尾をするの。交尾の間、お互いの姿を確認することはないんだって。それから、メスは卵をミノのなかに産み付けたら、2、3週間で干からびて死んじゃうんだって。死んだメスはそのままミノの小さな穴から地面へ落下する。それがミノムシの一生。
何か、さみしくて儚いよね。
私、ミノムシにちょっと似てる。
私は友達がほしかった。中学2年生の4月、クラス替え。明るく、可愛く、優等生の可憐な少女である私には、沢山の友達ができるはずだった。
しかし、現実はそう上手くは行かない。なぜなら現実の私は、暗くてブスで、でぶで劣等生の夢みがちな乙女だったからだ。
クラス替えから一ヶ月過ぎても、誰からも相手にされずに孤独な時間を過ごした。
青春の時間は刻々と過ぎていく。2ヶ月たっても私には友達ができなかった。
それどころか、一人で孤立している私を同級生たちはからかって、私に「ミノムシ」というアダ名を付けて馬鹿にするようになった。
孤立している理由は自分でも分かっている。私は暗くてブスでデブで自分に自信がなくて。周りの人に心を開かずに、ずっと自分の殻に閉じ籠っていたからだ。
だからあだ名がミノムシ。私はずっとミノを捨てることなくずっと閉じ籠る事になるんだろうか?
そんな、ある日。体育祭の準備のため、看板を作ることになった。私はくじ引きで負けて、看板製作を放課後することになった。
メンバーのなかには小学校の時からの私の憧れの王子さま野中くんと、他に女子が二人の合わせて四人のグループだった。
私は、クラス替えしてから初めて人と沢山喋った。メンバーはみんな良い子で、本当は私と仲良くしたかったけれど中なか話せなくて残念だったといってくれてた。のなかくんもとても優しくて最高の時間を過ごした。
看板製作の仕上げに近づいて、最後に看板を取り付ける為に使う針金が無いことに気が付いた私は、体育館の横にある倉庫に取りに行った。
もう、周りは真っ暗で誰もいなかった。倉庫のなかに入って明かりをつけようとしたとき、不意に私は、誰かに腕をとられた。
暗くて様子が見えないが、どうやら男の人らしい。私は、必死に抵抗したが無理矢理押さえつけられて、そのまま体を奪われた。
行為の最中。私は、この人がのなかくんだったらいいなぁと思った。真っ暗で相手の顔は見えなかった。私は、もう全ての感覚を失っていた。
しばらくたって、男は去っていった。体に力が入らなかったが。私は、明かりを付けて乱れたセーラー服を直すと、針金を探した。涙は自然と流れなかった。
針金を見つけて、教室に帰るともう誰も居なかった。どうやら、私が帰って来るのが遅れたので先に帰ったと勘違いして、皆帰ってしまったらしい。
私は、声を上げて泣いた。涙と一緒に恐怖も込み上げて来たが、誰にも相談することは出来なかった。ただ、ただ。惨めで。悲しくて。怖かったが、私は、自分のミノから一生出ることは出来ないだろうと悟った。
私は、人が怖くてたまらなくなり。その後、引きこもりの拒食症になり干からびて死んだ。




