鬱々ショート あるアイドルの一生
アイドルが好きで好きでたまらない女の子がいた。
10年後、彼女は18才で憧れのドームにアイドルグループのセンター要員として立っていた。それはとても誇らしかった、自分の夢を叶えたんだ。これからも更に自分を磨いてたくさんの人に夢を与えるアイドルでいよう!!そう、心に決めた。
5年後、彼女は落ち込んでいた。人気がすべての世界で次々に新しいメンバーが増え、彼女の人気は次々と新しいメンバーに奪われていった。
3年後、それでも何とか自分を励まし続け。彼女は25才の誕生日まで無事にアイドルを続けることが出来た。彼女は自分の人生を誇らしく思った。そして、彼女は芸能界から姿を消した。
それから、彼女はどう生きたかって?それは悲惨な人生だったそうだよ。世間しらずの彼女にたかってくる虫みたいな男は沢山いた。それにコロッと騙された彼女はみるみる落ちぶれていき、薬や酒に溺れ、借金まみれの地獄を味わったそうだよ。もう、これでもかっていう辛酸をなめてきたそうだ。
その彼女は今どうしてるかって??ほら、あの閉鎖病棟で毎日歌っている、おばさん。いるだろ?
そう、あの部屋に入ると暴れだすあの人。あれがそのアイドルだって言うんだよ。若い君たちは知らないだろうけど。俺の時代だったらトップアイドルだったんだよ。
でもさぁ、若いとき人気があっても。あーなってしまったら終わりだね。一生分の人気をアイドル時代にとってしまったみたいに。今じゃまるで誰からも嫌われてるんだからね。
君は全うに生きなよ。若いんだから、幾らでも失敗して良いんだからさ。歳取って死ぬときに愛されながら死んでいくのが素晴らしい生き方なんだよ!じゃあ、交代頼むよ。
、、、俺は昨日勤め始めた、精神病院の閉鎖病棟で先輩のおじさん職員からそう引き継ぎを受けた。何というか、幸せとか人生を考えさせられるような引き継ぎの時間だった。
人は何のために生きているのだろうなぁ?そんなことを思いながら仕事の時間を迎えた。
さぁ、今日も頑張るか。




