春の詩
#春の詩
今年もあの花を見かける季節になりました
あの頃のような“遠く”なる間隔がなくなって
なんだかあの日から遠くまで来てしまった気がします
季節毎にやってきて
散りゆく様さえ絵になるならば
案外に季節も律儀かもしれませぬ
「会えなくなる日」
不意にあの日を思い出しました
“言えなかった言葉”
“終わりに見上げた夜空”
“今でも忘れられない人”
“この街を出ていけない苛立ち”
痛みを感じたから優しくなれたのか……
優しさを知っていたから痛みを感じたのか……
もう戻れない日々にあの頃の感情
それらは乾いていてボロボロで
今はもう“ガラクタ”なのか“タカラモノ”なのかはもうわかりませぬ……
「時計の針を戻せたら」と思っていた時期も
それならばなんて考えていた日々も
もういいのです
もう会うことはないでしょう
あの花が散るたびに遠くなって
いつかこの“名前なき感情”が幻想だったと気付く日が来るでしょう……
あの花が散るたびに“さよなら”は言いません
きっとあの花が散る前から……
あの花が散るたびに遠くなればいい
あの花が散るたびに薄れてゆけばいい
あの花が散るたびに僕を忘れてくれていい
何度かあの花が散ることで貴女が消えますように
そして何度あの花が散りゆこうと貴女が幸せでありますように……。