表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/37

戦いはメンタルが左右する。

 

浴槽には、昨日の残り湯が放置されていた。


そこに一瞬の迷いもなく、煙りを上げる頭を突っ込む。


水しぶきを飛び散らせ、ジュッ!と音を立てて煙りは消え失せた。


コングはしばらくして頭をもたげ、長いため息をついた。




『危ねぇ…あと、一歩だった…』



一歩も二歩もない。十分に火だるまである。


その時、ひらめいた! 問答無用の究極の作戦である。


眼の前に浴槽がある。そいつには今、水が張ってある。

これを使わない手はない。



『俺を火あぶりにしやがって!』



コングは思い切り息を吸い込み、再び頭を浴槽の中に突っ込んでいた!



『……思い知れ!……お前の負けだ!!』




コングの攻撃は、火攻めから水攻めに切り替えられた。


浴槽の縁を、万力のような両方の手が握りしめている。




『…俺をナメるな…もう、遅い…』


コングは頭を浴槽に突っ込んだまま、ピクリとも動かない。


ハエもまた、気配を消している。


静まり返った風呂場に、時間だけが過ぎていった。



『…どうだ、苦しいか?…』




 ……………。





『…苦しいだろう?…』




 ……………。





『…そろそろ苦しいだろう?…』




 ……………。





『…本当は苦しいだろう?…』




 ……………。





『…正直に言え。苦しいはずだ…』




 ……………。





『…お前、無理してねぇか?…』




 ……………。




『…おとなしく出て来た方がいいぞ…』




 ……………。




『……そろそろ、やめた方がいいと思う…』




 ……………。





『…頑張っても、偉くないぞ…』




浴槽を握りしめるコングの手がそわそわしていた。




『…なあ、』





その時、耳の中が爆発した!


ハエがその羽根を猛烈に振りたくった。




コングは反射的に悲鳴を上げた。


頭は風呂水の中である。


火攻めでは、ハエにかなわない。

逆に、まるこげにされるところであった。


そして、水攻めも敗北に終わった。


風呂で逆立ちのまま、絶命するところであった。


もし、他人に発見されたとしたら、きっとこう思うだろう…。


ウォーターボーイズに失敗したのだと…。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ