コングの悲鳴
悲鳴は、いくつかに分類する事ができる。
女の子が「キャーッ キャーッ♪」と騒ぐ悲鳴がある。
これは、心配する必要がない。
ジェットコースターとか、お化け屋敷なんかで聞くことができる。
実に楽しげな悲鳴である。
つぎに、女の子が「キャーッ!」と騒ぐ悲鳴がある。
これも心配する必要はない。
風が吹き抜けた後なんかだと、むしろ男のロマンを直撃する悲鳴である。
運が良ければ、聞くことができる。
そして、「ギョエーッ!! ギョエーッ!!」と男が騒ぐ悲鳴がある。
こんなものを心配する必要は、さらさらない。
耳の穴にハエが入っただけである。
これも、ちょくちょく聞いたりする…ことはないが、あまり関わらないほうがいい。
とりあえず、ほっといても問題はない。
ろくでなしに天罰が当たっているだけである。
コングの悲鳴が響き渡っていた。まるで、断末魔の雄叫びである。
耳の中でハエがゴソゴソする。その小さな動きは、衝撃的な音量となった。
囁き声も耳元では大声と変わらない。だが、音源は耳の中である。
ゴソッ ゴソッ〃
「ギョエー!!」
雷が直撃した。
たまらず、コングは頭を振りたくった。尋常なスピードではない。
ずぶ濡れの犬が水を振り払うよりも、数段速い。
ガサガサッ〃
「グォーッ!!」
とても忙しそうだ。
無理もない。
ハエが耳に入っているのに、笑っている奴は少ない。
『なに考えてんだこいつ!』
コングは猛烈に耳をかきむしった。
『バカ!う、動くな!動くんじゃない!』
「オォーッ!!」
コングは心の中でハエに怒鳴りつけた。だが、声になるのは悲鳴だけである。
ハエを取り除こうと、コングは指を耳に突っ込んだ。
押し込んでいた。
耳の奥まで、わざわざハエを押し込んでいた。あわてると、ろくなことはない。
ハエが羽根を振った。振動がそのまま音になった。
それはとんでもない大音量であった。
耳の中は、中国の祭りである。
バクチクが破裂し、ドラが騒ぎたてる。わけの判らない鐘やら、太鼓がハシャギまわる。
だが、それで終わりではなかった。
ハエは耳の奥まで押し込まれていた。
眼の前になんか気になる壁があった。
ちょっと、引っ掻いてみた。
ゴリッ〃
鼓膜であった。
もう、悲惨すぎて言葉にはならない。それは、音という領域を遥かに超えていた。
講読ありがとうございます♪
都合で、次回は一週間ほど後になります。楽しみにしていてくださいね。




