表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/37

やはり、そう来たか…。

 


ハエはいつの間にか姿を消していた。ついさっきまで戦っていた。少なくとも、コングにはそう思える。


だが、ふと気づくと部屋から奴の羽音が消えていた。


辺りは、静けさを取り戻している。


窓際に、羽根の折れた扇風機が横たわっていた。モーターの小さな唸りだけで、動きはしていない。


始まりは、ハエを追い払うことにあった。

平和な眠りを続けるためには、奴は邪魔者でしかなかったのだ。


ただ、そんな不快感を遠ざけるつもりで手を泳がせた。


だが、それは不発に終わった。


一瞬のうちに、目的は追い払うことから殺意へとすり替わっていた。


行動がそれを後追いした。


 

仕止めること、葬り去ること、それが当たり前のゴールになっている。


今のコングにとって、ハエがいなくなるのは、都合の悪いことになっていた。


遠ざけたい相手が見えなくなり、今は探していた。



『逃げやがったか?』


コングはゆっくりとその場に腰を降ろした。


岩のように盛り上がった分厚い胸があった。大きく上下していた。




希望は実現する。

必ず現実となる。


問題は、本人が望みが叶っていることに気が付くかどうかである。



コングはハエを探した。眼の前にいない相手を探していたのだ。


つまり、ハエと会うことを心の中で望んだ。自分でも知らないうちに求めている。



コングの望みは、ハエとの再会である。



喜んで欲しい。

願いは見事、実現した!


ハエはコングの頭にしがみついていたのだ。


ホコリの舞い上がるのがたまらなかったのである。


眼ん玉にホコリが付くと、前がよく見えない。

前脚でゴシゴシしなければいけない。


だから、コングのむじゃむじゃの頭に潜り込んでいたのである。


だが、そのやっかいなホコリは次第に収まってきていた。



ハエがひょっこりと、メデューサから顔を出した。

まだ少しばかりホコリっぽい。



その時、ハエはとんでもないモノを発見した!




洞穴である。


なんだか見てるだけで幸せになれそうな【穴】である。


通常、人間界ではそれを【耳の穴】と呼んでいる。


念のために、辞書で調べてみると、けっこう多機能なことが解る。



1)音を聞くための身体の一部。


2)メガネを支える便利な留め具。


3)時々、赤く色を変えて恋愛相手をバラシたりするお節介な肉。


4)悪ガキや、浮気した亭主を引きずり回すためのハンドル。




今、ハエが見ている耳には看板がない。



<本人の許可無く、勝手に使用しないでください。>


『そんな看板があったらいいな』と考える者はいない。


しかし、そんな看板がどうしても欲しい瞬間がある。



ハエの行動が推理できている方、それは正解です。



ハエは、前脚をゴニョゴニョとすり合わせていた。


つぎに、後ろ脚もゴニョゴニョとすり合わせた。



準備運動だ。


軽くジャンプして耳の穴に入った!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ