表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/37

目撃者は消えた! 奴はどこだ!

「お爺さん。なんか叫んどるよ」


お婆さんは食器を片付けながら言った。


家主は湯飲みを片手に動きを止めていた。無言で天井を見上げ、小さくため息をついた。


口元がかすかに緩んでいた。



部屋は、舞い上がる石膏ボードの白い粉で視界のほとんどが奪われていた。


それが、汗だくのコングの全身に張り付いている。浅黒い身体に奇妙なまだら模様を浮かび上がらせていた。


天井を見上げていたせいで、ゴツゴツの顔は雛人形よりも白い。

眼だけが異様に浮き出ている。



さすがのコングも咳き込んだ。そして、踏みつけていたぬいぐるみで口を押さえた。


コアラのぬいぐるみだった。



頼みもしないのに置いていった友人のみやげである。




ガチャ!


その時、部屋のドアが開かれた。



様子を確かめるために、下のお婆さんが訪ねて来たのだ。


固まっていた。お婆さんはドアの向こうで石になった。



状況を説明しよう。


お婆さんは二階から叫び声を聞いた。


脚が弱いが、心配が勝った。


だから確かめに来た。


ドアを開けた。


白い煙りかなんかが立ち込めていた。


裸の男が全身白く塗りたくっていた。


声を掛けようとしたら眼が合った。


犬を喰っていた。



しかし、ここはジャングルではない。怪しい儀式はいらない。


お婆さんは次の行動にでた。



「ギェ〜ッ」



お婆さんも叫ぶことにした。


もうひとつの行動は速かった。


ダッシュで逃げた。脚は絶対に弱くなかった。彼女もまた、アスリートであった。




『大家のばあさんか? マズイとこ見られたなぁ』


お婆さんの顔を見て、コングはいくらか冷静さを取り戻していた。


彼が気にしたのは、破壊された部屋の有り様である。


自分のことだとは考えてもいない。もう少し、冷静になる必要があるかも知れない。


だが、部屋の状況は最悪であった。まるでショベルカーか何かの重機で襲われた後のようである。


確かにボロアパートではある。


いつ壊れてもおかしくはない。


だからといって勝手に壊していい訳はない。



ハエ一匹を葬るためにアパート一棟をガラクタに変えてはいけない。


その時、コングは気がついた。とても大切なことだ。


『ハエの奴どこいきやがった?』







書いている自分は笑えるけど、皆さんはいかがですか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ