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明暗を分ける瞬間

金属パイプが一直線にコングの頭を捕らえていた。


しかし、ヒット直前で固まって動かない。


コングの右手に【ケモノの角】が握られ、振り降ろす凶器を受け止めていた。


……いつまで防ぎ切れる?


ふいにコングの頭の中にエルの声が囁く。


ニコが爬虫類の眼でまばたき、再び金属パイプを振り上げた。


ゴツッ! 


受け止める角の上から重い衝撃が疾る。その勢いに弾かれ脚が絡む。


目の前、数センチの凶器を睨みながら後ろに吹き飛んだ。


背中から大理石の床に叩きつけられ、強打に一瞬、息が詰まる。


瞬時、ニコが間合いを詰め、さらに殺気を孕む金属パイプが襲いかかった!


ゴツッ! ゴツッ!


間一髪、受け止めた。


角の両端を握りしめ、連打をしのいだ。


「ニコ! 俺だ。俺が判んねぇのか!」


ニコに表情は無い。凍てつく視線で金属パイプを撃ち込み続ける。


ゴツッ!ゴツッ!


仰向けのまま、角を締め上げ受け止めた。


……反撃したらどうだ?


エルが冷たく囁く。


容赦の無い攻撃がコングの頭上から降り注いでいた。


一本の角でその攻撃を受け止める。直後、鈍い音を伴って手のひらに激痛が食い込む。


普段のニコの力では無い。その細身の体型からは想像もつかないパワーが吹き出していた。


衝撃の度に指先が痺れ、丸太並みの腕が揺れる。

その破壊力は尋常ではない


『折れるか!?』


コングは握りしめた角を思った。


しかし襲いかかる凶器を受け止める。選択の余地は無い。鈍い音で耐えていた。


……その男は本気だぞ。


ブォーッ!


辺りを切り裂く一撃がコングに牙を剥いた!


ゴスッ!


爆発的な力を込めた金属パイプだ。衝撃は凄まじい。

先端が一瞬に変形した。


しかしさらに勢いを加え、叩きつけて来た。


振り上げる速度が加速し、破壊力が炸裂した!


ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!


……その【角】で突き刺すのだ! 


ゴッ!ゴッ!


……反撃せねば、お前は終わるぞ。


エルの声に、あざ笑いが滲んだ。


ニコがパイプを握り直す。


そこにわずかの隙が見えた!


フンッ!


コングが脚を蹴り出した。ニコを狙う一撃が跳ねた!


しかし、一瞬速くニコが身をひるがえし、軽々と跳躍して交わした。


直後、コングは真横に回転し、勢いのまま瞬時に立ち上がる。


ブオッ!


その側頭部に横なぶりのパイプが風を切る!


反射!首をすくめ、数ミリ下に逃げる。


『…速い!!』


ブオッ!ブオッ!ブオッ!


金属パイプが唸りを上げ、上下左右から襲いかかった。常人の繰り出すスピードではない。


ブオッ!ブオッ!


上体をひねり、首を振り、角で受け止めた。


避けて、交わし、受け止めた!


「神虫!」


 

……無駄だ。お前のペットは今、瀕死の状態だ。間もなくこの世から消え失せる。


『…何!?』


シャーッ!


ニコの口から不気味な声が漏れた。


ブオッ!


パイプの先端が鼻先をかすめた。


見えなかった!


体が勝手に反応し、首だけで回避していた。


『…速過ぎる!』


鋭い突きが放たれていた。その動きがコングの予知の領域を超えた。


「神虫!なんとか言え!!」



ブオッ!ブオッ!


動体視力を上回る突きが繰り出される。


ジリジリと後退していた。コングは次第に追いやられ、壁を背にしていた。


『…クソッ!』


背後は無い。間合いを外すこと不可能だ。


……どうした大男? 


常人を超えるパワーとスピードに狙われていた。脱出は運と覚悟が明暗を分ける。


ギンッ!ギンッ!


攻撃が突きに変わった。鋭い突きが一直線にコングの額の辺りに撃ち込まれる。


『…見えん!』


紙一重で首をひねり攻撃が壁に弾かれる。

火花が散り、壁の破片が弾ける。


……大男、突き刺せ!生きていたいのなら、その【角】で目の前の男を突き刺せ!


エルが言い放つ。


その時、コングの足元に何かが触れた。


そいつを蹴り上げ、その勢いでニコに飛び込んだ!!



バンッ!


弾ける音があった。


ニコの頭上にコングの腕が静止していた。そこに握り潰されたペットボトルから【ミズ】が滴っていた。

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