伝説のバトルが開始された!?
伝説のバトルが開始された!?
コングはベッドの脇の目覚まし時計に眼を落とした。
だが、それでも正確な時刻は解らない。
1日で軽く10分は狂う時計である。
しかも、安定した狂い方では無く、早まったり遅れたりする。ひどい日は止まっていたり、さらに奇跡的に逆方向に回っていたりする。
タイムトラベラー以外でそんな時計の目撃者は、きっとコングぐらいなものだろう。
夜中に逆方向に回る時計を見たら、気を失うか、とりあえず見てないふりで布団をかぶらなければならない。
つまり、この時計は壊れている。時間の目安である。
そんな時計が昼過ぎを示していた。
ハエはせわしくコングの頭の上で旋回していた。
それを追い払うため、コングは何度も手を振りかざした。
だが、ただの一度もカスリもしない。コングの手の速度は次第に増していった。
ハエは縦横無尽にに飛び回って、寸前のところで避けている。完全にコングの動きは読まれて、鼻歌混じりである。
つぎの瞬間、ハエはアスリートの本能を発揮した。
突如、飛行コースを変え、鼻の先っぽにしがみついたのだ。
見事なフェイントであった。コングの手をギリギリのところで掻い潜っていた。
「んで〜っ!」
コングは意味不明な叫び声とともに、自分で自分の鼻先をビンタした。
が、もちろん、あっさり交わされた。ただの自滅である。
「んで〜っ!!」
今回の意味は判る。
痛いのだ。
それが、後世に語り継がれることとならない、伝説のバトルの始まりであった。




