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地球連合からのメッセージ

『ナニッ!』


コングは一瞬で状況を理解した。


【奴】が再び牙を剥いたのだ!


しかも今度は、眼に見える実体となって仕掛けて来た。


『マズイッ!』


コングはロープを振りほどいて立ち上がろうとした!?



「ウグッ」



そのロープがほどけない。ただ、ステージの演出で巻いただけのロープだ。


その極太のロープが動いていた。ミシミシとロープ自ら締め付けていた。



ボスッ!


眼の前でヒーローのプリズマンが消えた!



ボゴッ!


真横に一直線、吹き飛ばされた。壁に激突し、腕を押さえて唸った。


コングは首をねじり、視線でチルチルとミチルを追った。


子供達みんなで、二人の大人のロープをほどく真っ最中だ。


「ガキ共、逃げろ!」


向き直ったコングの鼻先に女王エルがいた。


蛇の頭から覗く眼は、コングを素通りしてチルチルとミチルを捕らえていた。


上下に瞼がある。特殊メイクではない。


夫妻のロープがほどけ、その家族は駆け出した。


チルチルとミチルが残っていた。家族を救い、拍手をしている。


コングのロープはさらに締め上げ、骨をきしませる。


動きを封じ込める為の領域は超えていた。


アナコンダに命を狙われ、罠にはまった獲物であった。


ビビーッ!!ビビーッ!!


コングの内側でシグナルが叫んだ!



フンッ!



コングは無理やりに伸び上がった。



ガツッ!


立ち上がりながら、頭でエルの下顎を捕らえた!


吹き飛んでいた。


女王エルの脚は宙に浮き、背中のあたりから、叩きつけられた!


だが、倒れた瞬間立ち上がってコングに向き直る。


臨戦態勢で身構え、コングを睨んだ!


視線と視線が絡み合った!


冷たい感情の無い瞳孔がそこにあった。


コングの上半身は椅子の背もたれに縛られている。だが、座席部分がへし折れ消え去っていた。



『…どうなってんだ!』



コングは正面にエルを据えたまま、周囲を伺った。


異様な光景が拡がっていた。


今まで騒いでいた観客がいない。


広い会場に、ただの一人も見当たらない。

そこは物音も無く、シンと静まり返っている。


一瞬にして人々が蒸発し、無人となっていた。


しかし、異様なのはそれだけではない。



気配だ!


姿だけでなく、人の気配が完璧に消失している。


初めから誰もいなかった。そんな音の無い空気が漂っていた。



女王エルはピクリとも動かない。


コングもまた動けない。だが、時間の固まった内側で、思考は駆け巡っていた。



『…客はどこにいった! いつ、いなくなった!』


静寂が、じわりじわりと染み込んでいる。



単に静かな状況とは根本が違う。音を生み出す【何か】が、今、どこにも存在しない!


絶対の孤独感が、コングを浸していた。逃げ場の無い悲しみが膨れ上がって来た!



それは【無】であった…。




コングの内側でシグナルが鳴った!!


ビッ!ビビーッ!

ビガガービーッ!


…コング! 奴の眼を見るな!!…


頭の中で叫び声があった!



その声が叫び続けた!


…奴に意識を向けるな!! その子達に心を開け!!…



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