実体化! 日常に潜む奴の正体
コングは檻の中で椅子にロープで縛られていた。
「ねぇ、コング。つかまったのぉ?」
ミチルはコングのロープをなでながら聞いた。
「まあ、そうみたいだな」
悪の組織に捕らわれたという演出であった。
コングをぐるぐる巻きのロープは異様に太い。
いったいどこで手に入れたのか、綱引きロープほどもある。
しかし、ただ巻かれているだけで、絞られている訳ではなかった。
チルチルとミチルは、二人ともコングと同じ檻に閉じ込められている。
さすがに、子供達にロープは無い。檻の中からステージ上でうろうろする悪の手下を見ていた。
5人ほどの悪役が客席に向かって悪態をついている。
「地球にはうまそうな子供達が多いぞ。順番に全員、食べてやる!」
「パパ、ボクたち食べられちゃうの?」
少年が聞いていた。コングと同じ檻に捕らわれた親子であった。
「コクトウ、大丈夫だ。なにも心配いらないよ。怖がらなくていい」
父親らしい男が幼い少年に話していた。やはり、彼も妻と共にロープで縛られている。
「みつろう、やっぱり、こんなの恥ずかしいよ」
男の妻は小声で訴えていた。
悪者らはトカゲを模しているらしく、全身銀色のタイツにウロコ模様が浮かび上がっていた。
「まずは、どの子から食べることにするかな?」
トカゲの形をした悪者が檻に近づいた。
会場の子供達が一斉に叫んでいた。
「ダメーッ!」
鉄格子は隙間だらけで、人の動きを制限は出来ない。大人の眼には柵の部類である。
「なかなか、美味しそうだ」
「ダメーッ!」
会場の子供達は口々にに声を振り絞っていた。
「ねぇ、コングも食べられちゃうの?」
ミチルは身動きの取れないコングの側に寄り添っていた。
「さあ、どうかな?」
コングが答え、眼でミチルに微笑みを投げる。
「コングはおいしくないよ」
ミチルはトカゲにキッパリと言い切った。
チルチルは檻につかまり、ぐるぐる回っている。
そのうち、隣にいた少年といっしょになって、檻で遊び始めていた。
悪の手下が小声でチルチルと少年にに話し掛けた。
「ボク達、ちょっと中で待っててね」
心優しい悪者であった。
会場が大音響に包まれた。そしてステージ中央から新たな怪物が登場した。
竜とトカゲを混ぜこぜにした様な、得体の知れない生き物であった。
全身ウロコに被われ、長い尾を引きずっている。
それは会場をゆっくりと見渡し、ビクッと身震いをした。
会場のあちこちに悲鳴が拡がる。
「我こそは、エル。全知全能の女王である」
頭には黄金の冠が不自然に乗っている。とりあえず、女王らしい。
トカゲ達が皆、一斉にひれ伏した。
「この美しい星が気に入った。
今日からすべては我がものである」
トカゲの一人が女王エルに報告した。
「エル様、この者達を捕らえました」
そう言って、コング達の檻を指差した。
「ほう、うまそうな子供達だ。大人は奴隷にするといい。そこのデカイのは丈夫そうだな」
会場から失笑が漏れていた。
女王エルはヨダレをぬぐって檻に掴まった。
「お前達、食べられたくなければ一度だけチャンスを与えよう。」
舞台下から集音マイクがコング達に向けられた。
「我が仲間となるか?」
会場の注目がステージ上のコング達に集まった。
「いいよ♪」
チルチルの声であった。
「なにしてあそぶ?」
突然、会場に笑い声が拡がった。
女王エルもつられて吹き出していた。
「悪の仲間だけど、本当にいいのか?」
「いいよ、あそぼ」
チルチルは檻を出て、女王エルの足元にいた。
「こらこら、勝手に出るな」
トカゲが笑いながらチルチルを檻に追いやっていた。
『…やっぱり、こうなるよな』
コングはこっそりと苦笑していた。
「もう良い、子供達みんな食べてしまうぞ!」
女王エルの号令の直後、ステージに花火が上がった。
「そうはさせん!」
不必要なぐらいポーズを付けて、ヒーローが現れていた。
救世主登場に会場の子供達は沸き返った。
「プリズマン!プリズマン!」
ヒーローの名が会場を駆け巡っていた。
登場と共に、アクロバットもどきのバトルが口火を切り、トカゲ達はあっと言う間に倒されていた。
女王エルだけは多少、粘りを見せたが結果は同じであった。
ステージ上に悪者全員が倒されていた。
「もう大丈夫だ!」
プリズマンが檻を壊した直後!
背後から襲いかかっていた。
女王エル!
瞬く瞳は、人間のそれではなかった!!
コングの耳鳴りがシグナルを発信した!!
尊敬する方にゲスト出演いただきました。
ピンと来た方は当たりです!




