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異文化エッセイ

和魂タイ才 メナムの残照

作者: 中原恵一

 メナムの残照という映画がある。

 戦時中のタイを舞台にした、日本の軍人とタイ人女性のラブロマンスである。

 タイではすごく有名で、今年2013年にもリメイクが作られた。


 タイはよく、戦後まで独立を守りぬいたアジア唯一の国といわれる。

 その経緯を自分なりに調べてまとめてみた。


 当初タイのピブン首相は日本と日泰攻守同盟条約を結んで枢軸国となり、フランス領インドシナの回復をはかった。さらにアメリカに宣戦布告したが、駐米大使のセーニーという人が宣戦布告の通達を拒否しタイは枢軸国なのに連合軍と戦わないという構図ができた。しかしアメリカはバンコクを爆撃。日本軍と協力することに疑問が出始め、ピブンは辞職。次に首相になったクワンは、自由タイ運動を指揮した摂政プリーディに影響されて、日本との条約は無効と主張した。この頃から自由タイ運動は激化。そして、タイに帰国したセーニーに首相の職をとってかわられた。戦後、タイはアメリカの正式な敵国でなかったことを理由に枢軸国として扱われなかったが、ほかのイギリスやフランスはマレーシアやビルマ、フランス領インドシナをもとの状態に戻すことを国際連合加盟の条件にした。

 こうして現在のタイの国境線が形作られ、タイ自体は独立を守りぬいた。


 まあ簡単に言うと、最後まで枢軸国と連合軍の間で揺れ続け、どちらに勢いがあるか見誤らなかったことが独立を守った理由だろう。

 しかし恋愛にそんな国がどうとか戦争がどうとかは関係ない。

 アンスマリンとコボリもそうだった。


 主人公アンスマリンは大学生で日本語を勉強していたが、川を泳いでいたときにたまたま大日本帝国軍人のコボリと出会う。最初アンスマリンは日本軍の進駐に対して批判的でコボリをはねつけるが、優しいコボリの性格に魅せられて次第に惹かれあっていく。そして日本政府とタイ政府は当時枢軸国として協力関係にあったせいで、二人は政略結婚させられた。

 しかし戦争はやがて激しくなり、連合軍はバンコクを爆撃する。タイ国内では日本との協力関係に疑問の声が出始め、欧米の留学生を中心とした地下組織自由タイ運動、抗日運動が勃発する。連合軍はタイ内部からタイを連合軍側へと変えようとし、諜報活動を展開した。そしてアンスマリンの父や元恋人が自由タイ軍に所属していたこともあって――捕虜をかくまったりした――二人は引き裂かれていく。

 そしてコボリは連合軍の爆撃によって死んでしまう。


 メナムの残照はフィクションだがこの辺非常にリアルで、結局どっちつかずだったタイがたどった歴史をよく物語っている。

 私は歴史に詳しくないので今回かなり調べたのだが、いい勉強になった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一時期仕事でタイに住んでいました。 メナムの残照の名前は聞いたことがありましたが、ふたりが政略結婚だったとは知りませんでした。 確かにタイはずっと独自カラーを守っているように見えます。 勉強…
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