月と太陽
「ねぇ、大婆様…どうして月と太陽は別々にいるの?」
大婆様に私は昔そう聞いたことがある。
その時 大婆様は こう答えたのです。
「月と太陽は昔は寄り添っていたのよ?とても仲が良くて2つで1つだったの。でも…」
でも…と続けた言葉に私は悲しくなってしまったのです。だって………
「月はね、ある時気付いてしまったの。太陽の輝きで月の存在が霞んでしまっていると。だから、月は太陽から逃げてしまったのよ…自分が輝ける星しか居ない暗い所に。」
月は どんな想いで居たのだろうと考えたら、何故か切なくなってしまったのです。
その時、普段は厳しい大婆様が優しい声でこう続けたのです。
「勿論太陽は月を追いかけたわ。ずっと寄り添っていた大切な番なのだから…でも、月は自分の輝きを隠す太陽から逃げ続けているの。朝と夜を繰り返しながら今も ずっと、ね…」
--朝と夜が在るのは月と太陽が追いかけ、逃げ続けているからなのよ--
普段は口数が少ない私が大婆様に こう言ったのを今も覚えています。
「何時か月と太陽がお互いに輝き合える時が来ると良いね。誰だって一人ぼっちは嫌だもん」と……。