八章
息を乱しながら部屋を見渡すと「は?」
その光景を見たとき…間抜けで場違いな声が出た。
「え?」
それは俺よりコンマ数秒遅れてきた京哉も、俺とほぼ同じ反応だった。
その光景とは快斗には〈黒髪ロングの美女〉が
誠には〈金髪ツインテールの美少女〉が
抱き付いていると言う光景であった。
俺は脳の処理能力をフルに使いその光景を処理しようとする。
「な、なぁ楓、俺らってなんでここ来たんだっけ?」
京哉もその光景から目を離さずに…だが舌が上手く働かない様で変な声音になりながら俺に聞いてきた。
「な、なんだったっけ?
まぁ抱き合ってるみたいだし
邪魔するのは野暮って物だな」
「それもそうだな…
じゃあな二人とも、彼女さんと幸せに」
京哉も俺の発言に同意し、扉を閉めようとすると、
「待て待て、これは誤解だ!
だから待ってくれ!」
「そ、そうだ!
快斗の言うとおり誤解だ!」
快斗と誠はあたふたしながら俺らに言うが、このカップル二組と同じ空間にいては俺の心が腐り落ちそうなので、
「のろけ話に付き合うほど俺らは寛大じゃないから」
「そうそう、楓の言うとおりそこまで優しくは無いから」
そう言いもう閉め終わるかと言う位扉を閉めようとするが、
「説明だけはさせてくれ!
頼む!」
快斗が半狂乱になりながら叫んだので、心が腐りそうになるが話だけは聞くことにした。
「分かったよ、聞いてやる
…あんまり聞きたくないが」
そう言うと快斗は、
「そうか!今こんな状況なのはだな…」
と言い抱き付いている黒髪女性の頭を撫でながら語り始めた。