六章
校庭に入ったは良いが校舎に入るのには苦労した。
何故ならどの扉も開いていなかったからだ。
まぁ夜中2時に開いてたらそれはそれで怖いが。
中に入れる場所を探すために校舎の外をグルグルと回っていると、ガラスが割られガムテープで仮補強された場所を見つけた。
「あ、家庭科室じゃん。
そういや快斗も家庭科室たわしで誠とキャッチボールしててガラス割ったよな」
楓はそう言うと後ろの張本人をチラリと見る。
「俺も昔はやんちゃだったからな…」
「俺も昔はな…」
二人は視線に気付いたのか腕を組み、さながら昔の武勇伝を語るおっさんの様な姿勢をとる。
「いや誠はともかく快斗は全くもって不良街道まっしぐらな気がするんだが」
俺がそう突っ込むと快斗は「は、早く校舎に入るぞ」
俺の突っ込みをスルーした快斗はそう言うとガムテープを剥がし体を滑り込ませ家庭科室に逃げ込んだ。
俺を除く三人はスルスルと入っていったが、俺は中年の様な腹がつっかえて入るのに苦労した。
「よっと」
やっとの思いで中に入ると二人は
「家庭科室か…
小型ガスコンロとガスボンベはありったけ貰っていこうぜ!
あって困らない物じゃないしな」
誠がそう言うと、「そうだな。
ガスボンベ探そうぜ!」
楓は誠に同意すると二人で後ろの棚やらを物色し始めた。
後ろ姿はまんま泥棒だなと思ったが今さらそんな事気にしてもいられないか。
俺も二人を手伝おうかと思ったが快斗が頭を押さえて何やら考えている。
俺は物色するより快斗の様子が気になったので「どうかしたのか?」
「いや、外は月光があった分ましだったんだが…中は殆ど月光が入ってこないからずいぶん暗いし、見回りするには危険だなって…思ってさ」
快斗は暗い廊下を睨みながらそう言った。
「暗くて探しようがねぇ」
「全くだ」
ガスボンベ探しを断念したのか、泥棒…もとい楓と誠は俺らの方に戻ってきた。
「にしても明かりか…」
俺は校内に動かせる明かりがある場所を考える。
その時俺はふと家の鍵にストラップ型の懐中電灯を、付けていたのを思い出した。
「そういや俺、ストラップ型の小さい懐中電灯なら持ってるぞ」
俺はズボンのポケットから鍵を取り出す。
皆が俺の手元にある懐中電灯を見ると…
「あ、そういや俺懐中電灯のアプリ持ってたわ。
電話とかは何故か無理だがアプリ自体は使えるぞ」
楓はそう言うと背中にからったリュックからスマートフォンを取り出した。
「おぉ!ナイス!
これで一気に南校舎、北校舎が見回れるな!」
楓は快斗がそう言ったのを聞き不安になったのか、「おいおい二組に別れて大丈夫か?
戦力分散するじゃん」
「お前らの戦闘力なら二人でも十分だって。
あとこれだけ騒がしくしたのに物音一つしないのはあいつらいないと、考えて良いだろうし。
まぁ油断は出来ないが」
「なるほど…」
楓は納得したのかそれからは何も言わなくなった。
その後俺が快斗に懐中電灯を渡すと、快斗はこう言った。
「んじゃ、俺誠ペアが北校舎、楓京哉ペアが南校舎で良いか?
片手で扱う鉄パイプじゃないと、懐中電灯は持ちにくいしな」
「良いよ!」
「了解」
「OK」
全員が同意したので快斗達は階段を登り始め、俺らは渡り廊下を慎重に歩いていった。