終わる世界 中編Ⅰ
……ここは?
これは何だろう? 何も無い。真っ暗。今、声を出しているのか、頭の中で思っているだけなのかすらわからない。手足すらあるのか、無いのか。ただ視界いっぱいに闇が拡がっている。いや、目を開いているのかさえ……
ああ。そうか。
俺、死んだんだっけ。
はは。
アリスにあんな格好良いこと言っといて。
いや、こうなることはわかってたよな?
気合でどうこうなるものじゃないよな。
命ってさ、そんなんでどうこうなるならこれほど尊いものなわけがない。命は、生は、そんな低価値なものじゃない。
奇跡そのものなんだ。
だから、いいんだ。これで。
アリスが、俺が死んでどう思ったのかはもうわからないが。
きっと。何かしらの変化は与えられたと思う。いや、変化なんてものじゃない。
二択。俺を、自分の意思で殺したのか、他人の意思で殺したのか、それがわかる二択。
俺の命を賭けた選択肢。アリスは、応えてくれたかな?
いや、命を賭けるなんていいように言いすぎか。元々はアリスがくれた命。返しただけ。
それでも、応えてくれたなら、俺は――
〝――涼太さん〟
……俺を呼ぶのは、誰ですか?
〝邪神を倒す方法があるとすれば、あなたはもう一度命を賭けることができますか?〟
邪神を……倒せる?
しかし、俺の命はもう……
〝あと一度だけ、その奇跡があります〟
皆を、仲間を、助けられる?
〝はい。しかし……〟
しかし?
〝確実に、命を落とします〟
なるほど。生き返りはするが、絶対に死ぬ。
〝だから、どうするかはあなたに任せます。身勝手な話だとは十分わかっていますから。こんな世界に巻き込んで、殺して、生き返らせて、殺して。また、生き返らせて、殺そうとしている……本当に、ごめんなさい……〟
あやまる必要なんてありません。
〝え?〟
今までの人生、俺はずっと死んでいたんです。そんな俺は殺されて、アリスが生き返らせてくれた。俺は、初めてそこで、生まれたんです。
だから、あやまる必要なんて、これっぽっちもない。むしろ、感謝しています。
〝涼太さん……〟
だから、迷うまでも無い。答えは、とっくに決まっています。
〝……はい〟
生きましょう――!!




