ぼっちな俺と、衝撃波。
「んー、ナニナニ。緊張しちゃってるwake?」
「……」
突然のクラッカーによる演出に見事にやられてしまった俺に掛けてきた言葉がこれだった。
唖然。ただただ唖然。
別に緊張したり恐縮したりしている訳では無い。本当、唖然、なのだ。が、しかし跳木は慣れているからなのか、大して驚いている様子は見せない。むしろ楽しんでいるような、そんな感じがする。
そしてまず、口調と雰囲気がめちゃくちゃなこの人、久持という男に対しての第一印象が
「(キャラ安定しねぇなー……)」
だった。するとまた俺の心境を悟ったのか、跳木が
「いや、久持部長。あなたのキャラに問題があると、私、跳木類は思います」
「ん? ああそう? じゃ直すわ。……っていうか、俺の元のキャラってなんだっけか、類」
その久持に対し「知らねぇよ!!」とツッコミを入れる跳木。……おお、すごい。あの類を完全に翻弄している、弄んでいる。マイペースのさらに上を行く圧倒的マイペースと言ったところか。
俺が感心していると久持……部長か。部長つけよう。久持部長が「ところで」と切り出してきた。嫌な予感はしつつもそれなりにちゃんと応対することにする。
「君、名前はなんて言うんだっけ?」
「……あー、赤田真です」
「まあ知ってたけどね」
「……は、はぁ……」
駄目だ、ついていける気がしない。キング・オブ・マイペース過ぎる。正直、苦手なタイプだと思う。そういえばさっきは荒ぶってて良く観察することが出来なかったがこの久持部長、なかなかのイケメンだ。天パが逆にファッションとして働いているような……? しかも高身長。跳木と双璧か……いや、それ以上か。
久持部長をじーっと凝視する俺の耳元に跳木の顔が近付いてきて
「……こんなんでも、この人学年トップだから」
「嘘ッ!?」
「嘘。……じゃないんだよな、畜生ー」
苦笑いしながら悔しがる仕草をする跳木。
そうか、これが天才タイプってやつね。オッケー理解。
「帰ります」
「ちょっ、真!?」
「……悪いな跳木。俺、この人とは相容れないみたいなんだ」
「はーいちょっと待ったー。誤解してるようだけどー……っていいか。とりあえず説明とかは明日するから今日はもう帰っていいよー。あ、類くんは残ってねー」
そして久持部長は何かを企んでいるような、そんな気味の悪い笑みを浮かべた。そしてそれに同調するように跳木も同じような笑みを浮かべた。……嫌な予感しかしねぇ。
「……じゃ、失礼します」
『もう……帰ってくるなよ』
「どこの看守だ、あんたらは」
寒いボケに寒いツッコミを返し、俺はアニメ・漫画部の部室を後にした。
……ああ、嫌な予感しかしないや。
俺は、帰宅の路についた。




