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ぼっちな俺と、格差社会。

「ちょっと、なんでいきなり嘆息? 真先生」

 いつも通りの茶髪にイケてるルックス、全く……

 っていうか今、周りのざわざわ感がすごい。「なんであいつが……」みたいな声わんさか。

「……格差社会だよなぁ……」

「嘆息の理由はそれか。んまあいいや」

 跳木は俺の調子を大して気にした様子はなくマイペースに「でよ」と話を切り出す。

「放課後、部室来てくれ。場所は分かるだろ?」

 まあ分かるっちゃ分かるさ。だけどよ……

「お前はついてきてくれないのか?」

「いや、まあついてってもいいんだがちょっくら用事がありまして」

「んー分かった」

 まあしょうがないだろう。跳木が居ないってことは久持部長と一緒か……って一緒!?

「久持部長に、変な、趣味は、ない、か?」

「ねぇよ。お前、昨日の俺の影響受けてるな?」

 小さく笑う跳木に対して割と真剣に悩んでいる俺。くそっ、こいつのせいだ……!

「まあそういうわけだ。多分大丈夫」

 多分かよ!? 

 っていうのも多分冗談だろう、きっと――

「赤田くん居るー!?」

 勢いよく扉の開く音と共に俺を呼ぶ声がした。その声の主は……まあ、言うまでもなかった。

「……じゃ、俺はここで」

 憎らしいほどにやにやと意地の悪い表情をしながら跳木は去って行った。

 教室内のざわざわ感は、さらに増す。

 正直、俺の鼓動の大きさは病気じゃないかと疑うくらい大きく、激しくなっていた。さりげなく胸に手をやるとその大きさがどれくらいのものか実感できた。

 そんな俺の内面を知らずに戸松樹愛は迫ってきた。

「ちょっとー、昨日メールくれてないじゃんよっ!!」

 距離、およそ一m。

 指した指が俺の鼻の頭に当たる。

「(うぉおおおおおおおおおおおおおお!?)」

「ちょっと!? なんか赤田君すっごい荒ぶってるよ!?」

 いやいやいやいやいや、無理もないでしょうよ! むしろ必然でしょうよ!

 そんな俺の内面を悟ったのであろう自席からこちらを見ている跳木が必死に笑うのを堪えている様子が伺える。

 なんとか冷静を取り戻すため、俺はいつもの奴らに馬鹿にされている場面を脳裏に浮かべる。……。…………。………よっしゃ、下がりすぎた。

「……で、メールか」

「そうだよ! っていうかテンションの起伏激しっ!!」

 よし……いつもの俺だ。おめでとう、初めて役にたったぞお前ら。

「いやー、ちょっと昨日寝ちゃってさー……」

「樹愛は深夜の一一時まで眠らずに待っていたのに!?」

「落ち着け、そりゃ深夜て言わないぞ。逆にいつもがどうなのか気になるレベルだ」

 察するにいつもは一〇時前後には眠っているのだろう。どこの小学四年生だ。……可愛いな、畜生!!

「そんなわけで昨日は寝ちゃったんだよ。すまん!」

 俺が謝罪すると戸松は「仕方ない」と武士風に言い放った後「今日は送ってね!」と念を押してきた。俺は無言で頷いた。そして戸松はいつもの集団へ戻っていく。そいつら、否教室内の全員が俺に対し何とも言えない目線を送っていたのは言うまでもない。……まぁ、そうなりますよね。

 未だにざわつく教室に聞きなれた鐘の音が鳴り響くと同時に担任教師が入室してきた。

「じゃー、HR始めるから日直挨拶ー」

 今日も一日が始まった。


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