ぼっちな俺と、取り巻く環境。
1.基本ノリの小説なので文章があまり整っておりません。
2.パロディ多めです。
――神様は、残酷だ。
人に対するステータス配分が、随分適当で不公平なものだと俺は考える。
というか、俺はその不公平さをまさに実感している。だから、こんなことを言う。
容姿や諸々の能力、環境……色んな要素が、不公平である。
それらに恵まれている人間からしたら別にこんなことはどうでもいいと考えるだろうし、そもそもこんなことは考えないと思う。恵まれていない人間だからこそ、考えるものだと俺は思う。
だが、これらの要素に恵まれていない人間は、時に自らの努力によって現状を打破することがある。
例えば容姿。
日々の生活に気を使って身体の状態をより良いものにしたり、髪型をいじることによって自分を映えて見せることができる。
能力だってそうだ。
部活動で例えると、才能が無い奴が努力によって最初から能力に恵まれていた奴を追い抜くことだってある。
だが、一つだけ叶わないと言っても過言ではないものがある。
環境だ。
環境っつーのは一人じゃどうも出来ないと思うんだ。複数の人間が変えようと行動を起こすことによって初めて微々な変化を見せる。その微々な変化に気付いた人間がその変化に賛同し、さらに良くしようと行動する。いわばその波とでも言おうか、波が起こり大きくなっていくことによって初めて「環境」は完全に変化する。
つまり、この理論で行くと一人では環境を変えるということは無理、なのだ。
そして、環境はやる気の発生源になる。
環境のおかげで自分を変えようと思う奴もいる、が、全てがワーストな奴にとって、それはただの小学生が相対性理論を理解することぐらいに無謀で無理なことなのだ。
そして、俺もそのすべてがワーストな奴で、環境を打破できずにいる人間の一人だった。
クスクスクス。
ひそひそひそ。
mp3プレーヤーに繋いでいるヘッドフォンを挟んでも聞こえてくる、嫌悪感を感じる音。
突っ伏した腕と腕の隙間から覗いてみると、その嫌悪感を与える音は俺に向けて放たれていることが分かる。俺が顔を伏せて周りを確認できないことをいいことに、突っ伏している俺の方を見てニヤニヤと、指を指しながらしている者もいる。クラス全員ではなく、一部ではあるが、その一部が厄介なのだ。
クラスでも中心に近い女子のグループ、そんなグループが俺を馬鹿にしているのだ。
そんなグループに逆らおうとする奴らは居なく、というよりもどこにでもありそうな日常茶飯事と言える光景だから止めようとする奴はいない。
やられている側としては、とても居心地が悪い。
気分がいいはずなんかない。
「(………………うっぜぇ)」
俺は、現実逃避の意味も込めて、その雑音を完全に遮断するために、音漏れも気にせず音楽プレーヤーの音量を一気に5つ上げた。
そもそも、こんな現状に至ってしまっているのは自分の責任でもある。
俺は、選択肢を間違えた。
選択肢を間違えたのは中学3年の頃であった。
深くは語る気は無いし予定もないが分かりやすく説明すると
『俺は、地元から離れた県外の高校へ進学してしまった』
ということだ。
中学3年の頃、俺は小学校の頃からずっと一緒だった友達らと今までにないくらいの喧嘩をしてしまったのだ。その喧嘩が起きた時期が丁度、進路を確定し願書を提出する時期であり、俺はそいつらと同じ地元の高校へ進学する予定であったが急遽進路を変更したのだ。
正直、あの頃の俺はどうかしていた。
少し考えれば分かった筈だ、この進路を後悔することを。友達らと居たあの空気とはここは酷くかけ離れていて。思えば俺はあいつらにに依存し過ぎていた。絶対的なホームであった。
そんな拠り所から一人吐き出され、その一人も戻ろうと行動も起こさずにただ離れて行ったのだ。ろくに知らない土地へ。
その結果が、これだ。
拠り所を失った俺は、依存していたことに気づき、あいつらの偉大さに気づき、自分がいかに井の中の蛙だったのかを知り、気力を失い、いつの日か、何もかもがフォーマット、そしてデリートされていた。これらが、全ての失敗の原因。
友達と触れ合っていたあの頃の自分と今の自分は全くの別人だ。
と、ここで一つ、自己紹介をしておこうと思う。
俺の名前は赤田真。16歳の高校2年生。
容姿、知力、運動能力は現在底辺レベルで、そんな身から放たれるオーラは「負け犬」のオーラ。自他共に認める「ぼっち」で、ペア作りでは常に余り、クラスでは完全に除け者。なら空気の方がいいが、自らの放つオーラの効果か先程から言っているように馬鹿にされる対象になってしまっており、そうとも行かない。最悪のポジショニングをしている。
このクラスの人間全てが嫌いだ。
ただただただただただただただただただただただただ。
嫌いだった。
……にも関わらず、だ。
俺はどうしてか不覚にも、ある人間に惹かれてしまった。全く、酷い矛盾だ。
その子に何かしてもらったわけでもない。
何かしたわけでもない。きっかけと呼べるようなことは何もない……はずなのに、俺はあの子に惹かれてしまっていた。
再び腕と腕の隙間から教室のドアの方を覗く、すると偶然にもその子はやってきた。
「……おはよぉ……」
「ちょ、え、戸松っちゃんどしたの!? テンション低すぎでしょ!!」
「っていうか寝癖がひどいねー。櫛かしたげるから、トイレの鏡行ってきなー」
酷く低いテンションで挨拶をしたその子こそが、戸松樹愛。俺が、好きになってしまった人。
程よく整った顔立ちに長身に細身の綺麗な体のライン。人心掌握に長けている、というか本人は何もしていないのに周りから人が集まってくる、言わば磁石のような存在でクラスの中心にいる。そして皮肉にも、俺を馬鹿にしてくるグループの一員であった。
「昨日深夜動画サイトで見たオバケの動画が超怖くて……」
『怖くて?』
「……寝れなかった☆」
『お前は子供か! けど可愛いから許す!』
ほら、また彼女を中心に笑いが起こっている。そして人がさらに寄ってくる。見事な循環。
そして俺はまたいつものように彼女が来たときはヘッドフォンで音楽を聞くふりをしておいて音量を0にし、気持ち悪く、腕と腕の隙間から彼女の姿を堪能し、彼女の声を堪能していた。
これじゃ馬鹿にされるのも仕方ないじゃないか。
自分の行為に反吐が出るようだった。