常連・3
海に行ってからの暫くたったが、俺は未だに彼女に自分の気持ちを伝えられずにいた。
昼過ぎの図書館に行くと、彼女の姿はいつもの席にあった。
外は茹だるように暑かったが流石にここはクーラーが入って心地良い。
少し離れた席から彼女を見ていると、その横顔が綺麗で長い間見とれてしまった。
今なら告白できそうな勇気がわいてきて、そっと近寄ろうとした瞬間、背中を叩かれた。
振り返ると、弟の健吾が立っている。
「兄さん、会社から消えた後、いつもここで時間潰していたのか?」
回りのことを考え、小さい声で話す健吾、
「ああーそうだが・・もしかして俺の後をつけたのか?」
弟の行動が気に入らず不機嫌に聞くと、
「悪いがいつも兄さんが会社抜け出して何やってるか気になったから、つけさせてもらった」
まさか?俺のさっきの行動も?
「なあー彼女のことが好きなのか?」
彼女に視線を向け、話す健吾にイライラしながら、
「お前には関係ないだろう」
素っ気無く応えると、
「関係なくないだろう。毎回、社長が会社から脱け出すなんて、社員の手前困るんだよ」
声の高さがヒートアップする健吾に焦りを感じ、部屋の外に連れ出した。
今の話しを彼女に聞かれていない事を祈った。
夕菜視点
さっき一瞬人の争う声が聞こえ、振り返ったが誰もいなかった。
私の勘違いだったのか?
今日は聡さんはいつまで経ってもここには顔を出さなかった。
きっと仕事が忙しいんだろうと思いながら、立ち上がる。
そろそろ買い物でもしながら帰らなきゃ遅くなっちゃう。
窓から外を見ると雲一つない青い空が見える。
案の定外に出ると、暑かった。
一歩歩くたび、汗が吹き出し、目が回りそうになり、自動販売機でお茶を買うことにした。
自動販売機の前で人影が見えて驚いた。
聡さんが二人?
暑さのせいでおかしくなったかな?
そっとその場を離れ、ボーっとした状態で帰路についた。
店に戻っても、気になってしょうがない。
いくら暑さでおかしくなっても聡さんが二人に見えるなんて・・・・・
「どうしたの?考え事?」
叔母さんに声を掛けられて、思わず、
「今日聡さんが二人居たんです。それって変ですよな」
言ってしまった。心の中にあった言葉が口から出ていた。
「変ね。でもそれって彼が双子だったら有り得るんじゃない?」
得意気に話す叔母さん
さすが・・・・叔母さん・・感心していると・・
「いらっしゃいませ」
叔母さんが店の入り口に視線を向けた。私もとっさに、
「いらっしゃいませ」
振り返ると、今一番気になっていた人がそこには、立っていた。
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いつも更新遅くてすいません。