常連・2
結局無理言って俺は彼女の休みの日、外に連れ出した。
こんな風に外デートするなんて花ちゃんとの散歩以来で意識してしまうが俺の気持ちも知らずに夕菜ちゃんは楽しそうでこちらまで笑顔が漏れてくる。
「どっか行きたい場所ある?」
そんな風に聞くと、
「海・・・一度見てみたいんですけど良いですか?」
遠慮しながら聞かれるが、俺的には全然嫌じゃない。
むしろ、いかにもデートって感じで逆に嬉しい気持ちになってきた。
「良いよ、少し時間掛かるけど構わないかな?」
俺が心配そうに聞くと、笑顔で「はい」って答えてくれて嬉しくなる。
少しは脈があるのかと期待してしまう。
車の助手席を開けてあげると、
「ありがとうございます」
夕菜ちゃんが乗り込んだ。俺も運転席に乗り込むと、車を走らせる。
さっきから窓の外を楽しそうに見つめている夕菜ちゃん、
その横顔が今は自分だけのモノだと思うと嬉しくなった。
一時間ほどで着いた海を目の前にすると、凄く嬉しそうな顔をした。
「これが海なんですね。こんな匂いがするんだ」
思いっきり目を見開いて、海を見つめる夕菜ちゃんは、本当に海に来たのが初めてなんだと思う。
「砂浜に下りてみる?」
声を掛けると、目をキラキラさせて、
「良いんですか?」
聞いてくる。
俺は頷くと夕菜ちゃんの腕を取った。
少しだけ彼女の体がビクッと震えた気がしたが、
「砂浜転びやすいから、手を繋ごう」
声を掛けると笑顔を向けてくれ、俺は心の中で安堵の溜息を吐いた。
きっと里奈さんが言っていた簡単じゃないという事が少し解った気がした。
彼女は恋愛にはきっと慎重なんだろう。
「凄い海ってキラキラしてるんですね」
太陽を浴びた海を見つめて、話す夕菜ちゃんの姿に思わず君の方がキラキラしているよと言いたくなるが、おじさんに思われそうで、
「そうだね。海の水が太陽の光に反射してるだよ」
なんて当たり前に返してしまう。
でも本当に夕菜ちゃんは輝いていた。
肌が白いから光を浴びすぎると消えてしまいそうな気がして心配になる。
彼女は俺から見ると本当に脆い存在に見える。
だから早く告白したくなるが、まだ早いと自分にブレーキを掛けた。
今の状態で彼女の存在が俺の目の前から無くなるのは耐えられない。
それだけ俺は彼女のことが好きだった。愛していると言っても良いぐらいの存在だった。