初恋
夕菜は今自分が置かれた立場を理解するのに時間が掛かっていた。
どうして?
お友達じゃなかったの・・・?
呆然と立ち尽くしそうになったが、里奈の、慌てた様子の、
「もう聡さんは冗談が上手なんだから・・・」
その言葉で我に返った。
冗談?そうだよね・・・私なんかに聡さんがプロポーズなんて有得ない。
一人心の中で納得しながらも寂しい気持ちが溢れてきた。
考えてみたら、聡さんも結婚してもおかしくない年齢、
いつかは、結婚して奥さんとこの店に顔を出す日が来るのだろうか?
その時自分は耐えられるのだろうか?
そこまで考えてから、自分がどうしてこんなに気持ちが沈んでいるのか、解らなくなる。
「夕菜ちゃん大丈夫?」
里奈の言葉で慌てて、
「大丈夫です」
答えてからも未だに心の中に鉛を抱えているみたいに気持ちが重くなっていた。
それからの日々、夕菜は聡が来店するたび、鼓動が激しくなるのを感じていた。
私って病気なのかしら?
顔が真っ赤になり、自分の今の状態が解らず悩む日々が続いた。
ある日、閉店後に、
「叔母さん私って病気なのかな?」
里奈は夕菜の最近の様子に気付いていた。
聡が店に現れると、裏に引っ込んでしまったり、ホールから中々戻ってこない。
それまでは普通だったのに・・・
聡が現れると、落ち着きがなくなる。もしかして・・・?
自分の気持ちに気付いたのかしら?
里奈は一人ほくそ微笑んだ。
「どうしたの?夕菜ちゃん」
穏やかな声で応えた。
下を向いて中々喋りださない姪っ子に優しく、
「聡さんのこと好きになったんじゃない?」
問い掛けてみた。
驚いた顔で里奈の顔を見つめる夕菜は、
「どうして?」
吃驚した顔をして里奈を見つめていた。
サラサラの髪が電灯に照らされ、綺麗に天使の輪を作り出している。
どこから、見てもこんな可愛い姪っ子をほっとく馬鹿な男は存在しないと思えた。
これって恋なの?
私は聡さんが好きだからこんな風に心臓がドキドキするの?
好きだから・・・顔が真っ赤になっちゃうの?
一度封印しようと思った気持が再び態度に表れていたことに驚いてしまう。
本当に人を好きになると、気持ちが締め付けられるほど苦しくなるもんなんだ。
その日の夜夕菜は一晩中眠れなかった。