49話 take89。
49話 take89。
take89
――『砦と薬宮』
『――まず、ほんまに誰やねん。クラスメイト? おったような気がせんでもないけど、興味ゼロ以下やから、ハッキリとは覚えてへんねん』
『ははは、ははははは……』
『マジで! なに、わろてんねんて! いてもうたろうか、ほんま!』
『………………つ……』
『はい? なに? 聞こえへん』
『……ツラい、なぁ……』
『ちょっ、ほんま、どないしてん……なんか、もう、恐いねんけど』
『このまま……あと……20年以上か……』
『ええ加減にせぇよ、自分。言いたい事あんねやったら、ハッキリ言えや。そうやないと、こっちは、なんちゃ分からへんねん』
『俺は……お前の事が……』
『声、張れや。ガチで、聞こえへんねんて。鬱陶しいのぉ』
『………………守る。……それでも』
『は?』
『絶対に守る。そのために、もう少し……あともう少し、頑張るよ』
『……ぇ、ほんま、誰? さっきから、なに言うて……ぃや、待てよ……』
『ああ、そうだ。そうだよ。報酬なんて、何もいらない。お前からは、すでに全部をもらっているから。だから、俺のあがきを、知って欲しいとさえ思わない。ただ……ただ、俺が、それほど、お前に感謝しているという事を、キチンと伝えられない事が、ただ、くやしい……』
『――と、と……とり……砦……才悟……』
『?!』
『あんたの名前、たぶん、砦才悟やんなぁ? あれ、なんで知ってんねやろ。上だけやなく、下の名前まで……ぇ? ほんま、なんで? 全然、記憶にないのに……ぇえ、意味わからへん。なに、これ』
『……』
『あれ……ぇ? ちょっ、え?! な、なんで、あたし、泣いてんの……はぁ? 恐い、恐い、なに、この感情』
『バ、カな……記憶は完全にリセットされているはず。どうして……』
『苦しい。なに、これ……はぁ、はぁ……砦……砦……サイ、ゴ……』
『ぉっ、落ちつけ、トコ! 大丈夫だ!』
『サイゴ……あたし……』
『大丈夫。もう大丈夫だ。二度と、こんな事は起こらない。俺は、もう二度と、こんなみっともないマネはさらさない』
『ち、違う。そうやない。そんなんを言うて欲しいんやなくて……サイゴ、あたしは――』
★
take100
――完璧に、立場が逆転してしまった。
(ここまで差があるか……くそがぁ……)
気付けば太陽が昇っていた。
海もない真っ白な空間なのに、なぜか青い空。
天使の階段が砦を包み込む。
まるで、敗北を伝える皮肉なスポットライト。
(勝てない……今の俺では……200年では……足りなかった……)
砦が繰り出す全ての攻撃を、ニャルは右腕一本で受けてみせた。
神の本気。
まるで、薄情な運命のように、砦の全てをあざ笑う。
目の前で、ニャルの魔力が膨張したかと思ったら、
そのコンマ数秒後には、砦の周囲にある空間がギュギュっと圧縮された。
(ヤバっ――)
ユニットのブーストを吹かせてどうにか逃げ出すが、その先にニャルがいた。
右腕をふりかぶって、ニタァっと笑っている。
こんな状態では、到底よけきれず、ニャルの拳を顔面で思いっきり受けるしかなかった。
ズガンと地面に叩きつけられて、脆弱な肉体が悲鳴をあげる。
「がはっ……」




