47話 トランスフォーム・モードGOO/レベル5
47話 トランスフォーム・モードGOO/レベル5
ニャルが時間を稼いでいる間に、
クルルーは、両手に、巨大な青い斧を召喚させ、
「まず、一人」
アリでも踏みつぶすよりも軽い。
何の感慨もない声。
スっと斧を振りかぶる。
最初に狙いをつけたのはトコ。
特に意味はない。
トコは必死に、回避しようと全力であがいているが、指一本として動かない。
――砦の、
「トコォオオ! ニャル! どけぇええええ!!」
絶望に濡れた悲鳴が空間に響き渡る。
青い斧が、今まさに、トコの頭上へと振り下ろされようとした、
その時、
「インサニティレジスト!! 魂魄修理プログラム起動! トランスフォーム! モード・GOO/レベル5!!」
罪華が、必死の形相で叫んだ。
懐で、緑の光が輝いたかと思うと、一瞬で彼女を包み込む龍化外骨格。
すぐさま呪縛から抜け出し、
罪華は、トコを守ろうと、クルルーの攻撃を、召喚したレーザーブレードで防ぐ。
あまり見る機会のない、罪華の、必死に抗おうとしている鬼の形相。
なんとかクルルーを弾き返すと、罪華は、
「はぁ……はぁ……」
肩で息をしながら、チラっと、背後にいるトコに視線を向けた。
「……ごめんなさい……」
心の底から反省していると分かる謝罪の言葉、そして態度。
あまりにも罪華らしくないソレらを受けて、トコは、
「あたしに頭を下げなあかんのは、あそこにおるイカれた邪神だけや。他の誰にも、謝られる筋合いなんかあらへん」
「……」
「それになぁ……おかげで、オモロイ男と出会えたから、あたし的には、むしろプラスやねん。せやから……気にすな」
「……ほんと、ごめんね……トコ……」
涙を流しながら、最後にそういうと、
右腕でグシグシっと拭い、
「スピリット・ツインビースト・システム発動! アルマゲドン・ユニット、オープン!」
レーザーブレードを捨てながら、両手に召喚した『猛獣の爪』をモチーフとしたナイフを、手の中で、二・三回転ほどクルクルっと回してからグっと握りしめる。
背中からは、緑の血に濡れた悪魔の翼が生えていた。
ナイフの感触を確かめながら、フワリと舞いあがる罪華。
罪華は、クルルーを見下ろし、
ニタっと、いつものイカれた笑みを浮かべ、
「にゃはは。今の罪華さんなら、時間を稼ぐ事くらい訳ないにゃぁ。さあ、罪華さんの強さに瞠目し、恐れおののくがいいにゃぁ」
「罪華さん、その力……あなた、まさか、美麗さんより強かったんですか? な……なんで、隠していたのですか?」
「……最終的には、この手で、トコてぃんを殺すつもりだったから、手の内は出来るだけバラさない方がいいかにゃぁと思ってぇ」
「なるほど。やたら単独行動をしたがるなぁと思っていましたが、そういう意図があったのですか。全然、気付きませんでした」
「気付かせない努力ばかりをしていたから当然だにゃぁ。……そんな努力ばかりで、真実を見ようとしなかった……だから……踊らされているとも気付けなかった……とんでもない、クソバカ女だ……」
罪華は、グっと奥歯をかみしめ、一度俯いてから、グワっと顔をあげて、
「クルルー。トコを殺したかったら、私を殺さなければならないという『宇宙の真理』をその魂魄に刻め。……最初に明言しておくが……完全に殺しきらない限り、私は、抵抗し続ける。たとえ、首だけになっても……かみついてみせる!!」
ギラリと鋭く睨みつける。
ユニットに魔力を注ぐ。
ヒュゥっと身を低くして突撃。
重力を殺す軽業。
中位の時空魔法をも駆使し、縦横無尽に暴れまわる。
両のナイフを休みなくふるい、クルルーを切りつける。
(これだと……弾幕、薄い)
――手数が足りないとみるや、
「ガンサテライト‐システム発動!!」
システムを追加発動させ、
周囲に、三つのアサルトライフルを召喚した。
碧のオーラを放つAUGA3型の自動小銃。
クルルーは、
「ぬぅぅ……」
視界を覆うほどの弾幕と二本の刃に抑え込まれて苦悶の声をあげた。
(防げないほどではない……が、鬱陶しい……即時の突破はできない……見事な展開力……)
実力ではクルルーの方が上だが、
後先考えずに全力の攻撃を叩き込んでくる罪華に気迫で圧倒されている。
罪華は宙を舞う。
素粒子均衡力と踊るアクロバット。
エネルギーの解析演算値を上昇させて、蒸気を分解した。
プラズマを並べて、透過挙動に遊びをつくる。
振動数すらハックしてみせる他次元の頭脳。
ランダム性を持つ弾幕がクルルーの観念を埋め尽くしていく。
罪華のナイフはクルルーそのものではなく、クルルーの意識を切断していく。
その間も、三丁のアサルトライフルは休む事なく火を吹いている。
(た、たったそれだけの手札で、私を完封するのか……なんという異質……この娘、本当に人間か?!)
明らかな力量差があるにも関わらず、
互角の戦いを続けている罪華とクルルーの両者を尻目に、
ニャルが、
「……ちっ……なに押されてんだ、クルルゥゥ! それでも最強のGOOかよ。情けねぇ」
素の口調でそう吐き捨てた直後、
イライラを隠さず、強めにパチンと指を鳴らした。
その瞬間、クルルーの体がボォっと光った。
ムクムクっと筋肉が膨れ上がっていく。
一回りほど大きくなると、クルルーは、自分を追い詰めていた罪華に、豪速の蹴りをいれた。
多量の血を噴き出しながら吹っ飛ばされる罪華!
そんな痛々しい彼女を見て、女性陣が両手で口を抑えて悲鳴をあげた。
――故に気付く。
自分達の体が動いている。
停止の呪縛が解けている。
つまり、闘える!
ならば、当然!!
「呪縛、解けとる! ミレェェ!! 行けぇ! ゴー、ゴー、ゴォォオオオ! 罪華を援護せぇえ! リミッターは外したらアカンでぇ! 長期戦を覚悟でやるんや!」
「トランスフォーム! モード・GOO/レベル2!! クリムゾンスラッシャー接続!!」
即座に全員が、戦闘モードに突入。
自分に出来る最善を尽くそうと奔走し始める。




