46話 200年。
46話 200年。
take100
――時間が止まった。
そう認識するよりも一手速く、砦は、ニャルの保有空域にいた。
立体的な理解が追いつかない。
虚剣の雨が視界を覆う。
光が弾けて時空を埋め尽くした。
永遠に加速し続けるアリア・ギアス(無限回廊の算盤)の中、ニャルは真剣な表情で、
「……たった200年で、ここまで……」
ボソっとそう呟いた。
ニャルは、暫定固有結界の浸食率を調節しながら、
「認めよう。想定外。凄まじい。感嘆に値する。君はイカれている。敬意と畏怖を込めて、『廃神』と呼ばせてもらおう。君は、本当に素晴らしい。もちろん、万全の状態なら、ボクの方が強いけれど、――『今のボク』では、まともに闘った場合、どうあがいても負けてしまう」
そこで、ニャルはニヤっと笑い、
「まっ、でも、じゃあ、まともに戦うのをやめればいいだけなんだけどねぇ。はい、解除」
パチンと指を鳴らすと、彼女達を守っていた障壁がなくなった。
それを見て、砦はため息交じりに、
「さっそくの前言撤回。お前といい、ウムルといい……神話生物には、プライドってものがないのか」
「プライド? 何を勘違いしているのかな? ボクは人間というオモチャを使って、ちょっとした、ごっこ遊びをしているだけだよ。まさかとは思うけれど、このボクと真剣に戦っているつもりだったの? はは、滑稽だねぇ」
「……」
ニャルが、
「《全員、動くな》」
そう命じると、罪華だけではなく、
砦以外の全員がピクリとも動かなくなる。
「そしてぇ……クルルー、こい」
命じらると、突如出現した闇色のジオメトリから、頭部がタコでコウモリの羽をはやしている奇妙な化け物――クルルーが現れた。
「クルルーはS級の中のS級。ウムルよりもハイスペックな最強のGOO! ……だから、別に、動きを止めなくても、紅院たちだけじゃあ勝てない。けど、まあ、保険だね。常に万が一を考えておくのが、このボクなのさ」
ニャルは、ニコっと微笑み、
「クルルー、標的はあの女共だ。遠慮はいらない。……派手にやっちゃえ♪」
「了解しました、神よ」
恭しくお辞儀をしてから、クルルーは、トコたちを殺そうと飛び出していった。
「俺がここにいるのに、トコを殺せるなんて夢見てんじゃねぇぞ!」
クルルーを止めようとするが、そんな砦の目の前に瞬間移動したニャルが、
「ははっ、ボクがここにいるのに、クルルーを止められるなんて、夢をみちゃダメだよ」
「どけぇ!」
全力で朧月華をふるうが、あっさりと防御される。
神秘的な抵抗ではなく、ただの、ガチガチに固めたガード。
カウンターをする気も、ジャストガードをする気もない。
ただ、純粋に攻撃を受け止めただけ。
ゆえに、ミスもクソもない。
「強い、強い! けど、耐えられないほどじゃない! 砦才悟。人の限界を遥かに超えてしまった者よ。守りだけに特化した神の膨大なHPを削りきるのに、どれだけ時間がかかるか、試しに計算してみなよ。きっと、『人を超えた君』であっても抗えない『深い悲しみ』に包まれるはずさ」
「どけ、ごらぁ!」
「はははははははははははははははははははぁ! たーのしーなー」




