45話 全力。
45話 全力。
もちろん、ここで終わらない。
こんなところで終わってやらない。
「時神式クロノスフィア・マトリクス[[エグゼギアシステム]]発動!
/ユリーカコード・イクシード/ ルナティック・ナイトメアユニット、オープン!
我が身を守れ、インビンシブル・マキシマイズ・ドリームオーラ/クラスGOD!!」
膨れ上がっていく、地獄を積んできた廃人の結晶。
その姿は、おぞましいほどに美しかった。
頂点に届いた者の威容。
最終決戦仕様の時神式エグゼギアは複素数亜次元機構を積層させた、イス人渾身の傑作。
機械式時計の究極進化、精緻の最果てとも評すべき美しいフォルムのムーブメントが、後光のように、砦の背後を飾っている。
瀟洒な堕天使を想起させるエッジの利いた六枚の黒翼には、バチバチと紫銀の電流が走り、アンバランスだった魔王的な外装を、整合性のある廃神のシルエットへと完成させていた。
ニャルは、
「………………マジかよ……信じられねぇ……いかれてやがる……」
ボソっと声をもらした。
ヒクついている頬が心情を吐露していた。
――砦は言う。
「シンギュラリティコールと同じだ。様子見のロケハンでガチビルドの手札なんざ見せる訳ねぇだろ。つぅか、ヨグとやった時のような、明らか解析特化のバフ積みで俺の器を判断するとか、てめぇ、マジのアホか?」
奥歯をかみしめて苦い顔をしているニャルに、砦は、続けて、
「take52以降は見てねぇだと? ナメた事ぬかしやがって……この俺が、その100年前後の間で、どれだけの絶望を乗り越えてきたと思っていやがる……どれだけ必死にあがいてきたか……いったい、どれだけ、どれだけの……どれ、だけぇ……っ……」
積み重ねてきた絶望を乗せて叫ぶ。
「俺の200年をナメんじゃねぇぇえ!!」
★
take55
――『砦と薬宮。タイムリープ直後』
『やったぞ、薬宮。俺は、ついに……越えられない壁を越えた』
『……は? あんた、だれ?』
『俺の手は、神の領域に届いた』
(アカン……ホンマもんのアレな奴にからまれた。どないしよ。こっわ)
『重ねてきた地獄がついに実を結んだんだ。地獄だった。ぁあ、地獄だった。何度も諦めかけた。何度も心が折れた。何度も、何度も。けれど、俺は越えた。ヘシ折れてやるものかと、全ての絶望を乗り越えてきた。見えてきた……可能性。俺は、必ず――』
『ぁあ、うん。OK。良かった、良かった。ほな』
『薬宮』
『ぁ? ……なんなん? てか、誰?』
『ありがとう』
『何がやねん。キモいのぉ』
★
take89
――『砦と薬宮。タイムリープ直後』
『薬宮。喜べ。俺の魂魄は……神の深淵に至った』
『……は? あんた、だれ?』
『レベル15になるまで70年近く……随分時間はかかったが、どうにか最低限の目標は達成した。まだまだ朧月華は外装が整ったばかりで改造も強化も不十分だし、エグゼギアはほとんど未完成と、理想値には程遠い状態だが、幸い、リミットまで、まだ20年残っている。それだけあれば、高みに辿り着けるはず。俺の手は……ガチで、神の頂点にまで届くかもしれない』
(……うわぁ……こいつ、完全に目ぇイっとんなぁ……)
『薬宮……頑張ったぞ……本当に……頑張った……全部、全部、全部、捨てて、闘ってきたんだ。希望に見捨てられ、今日を見失って、絶望をすすって、それでももがいて、あがいて……孤独に安寧を求めて、機械的に明日だけを演算して、不条理をねじ伏せて、臆病な泣き虫を殺して……今日という坂の途中まで這いあがってきた』
(これまた、随分とドギツイんにからまれたなぁ……はよ逃げよ……)
『……全部、全部……お前が――』
『うん。良かった、良かった。ほな』
『薬宮。聞いてくれ。俺は、お前に――』
『うっさいのう! あたし、忙しいねん。話しかけんなや。てか、マジで、ジブン、誰? 現状、あんたのこと、重度の厨二って事以外、なんちゃわからへんねんけど』
『……』
『なんやねん。黙るんやったら、ハナから話しかけんな』
『は、はは……』
『今度は急に笑いだしよった。きっしょぉ……マジ、なんやねん。てか、まず、ほんまに誰やねん。クラスメイト? おったような気がせんでもないけど、興味ゼロ以下やから、ハッキリとは覚えてへんねん』
『ははは、ははははは……』
『マジで! なに、わろてんねんて! いてもうたろか、ほんま!』
『………………つ……』
『はい? なに? 聞こえへん』
『……ツラい、なぁ……』




