37話 お前はおかしい。
37話 お前はおかしい。
「――あと、お前らの親友の一人『久剣』って女が、神話狩りとしても、ぶっちぎりで強くて、紅院が全幅の信頼を置いていたっていうのも聞いたよ。お前らの携帯ドラゴンのビルド(能力構成)が、紅院を含めて全員サポート特化になっているのは、元々、とにかく久剣を前に出して、それを支えるという構成のパーティになっていたからだろ?」
「ああ。あのアホは、戦闘になったら頭に血が上って突撃してまうから、とにかく死なさんように、あたしらが支えてやらなしゃーなかった。そのせいで、あいつが脱落してからはめっちゃしんどかったわ。なんせ、後衛しかおらんようになってもうたからなぁ」
「この時点のお前らは、実質、ボロボロだ。将棋で言えば飛車角だけじゃなく、金も銀も香車も根こそぎ落ちている、歩と桂馬だけでどうにかしないといけない……ほとんど壊滅状態」
「歩ぅ言われると腹立つなぁ……美貌に関しては龍王も裸足で逃げ出すレベルなんやけど。総合判断してもらいたいとこやな」
「……紅院が抱えている不安とプレッシャーは相当なものだろう。この時期のあいつは、『みんなを守らないといけない』という想いに押しつぶされそうになっている。その重圧、孤独、不安、苦痛、悲哀……今の俺なら、その痛みが十全に理解できる」
狂おしいほど、『優れた前衛』が欲しいこの状況。
――そんな折、ようやく運命に導かれて委員会に参入した待望の新入りは、ビビリでヘタレのクソ泣き虫。
おまけに、成長タイプは超晩成型のオールマイティ。
言いかえれば、突出した力を何も持たない器用貧乏で、
決して即戦力にはなりえない『二軍でじっくり枠の歩』。
『現状では、一番いらないゴミがきたぁ! 私の運、どんだけ悪いのよぉ!』
「――紅院は、人前じゃあ、必死に気を張ってはいるが、結局の所は、ただのお嬢様……でも、当時の俺は、紅院の虚勢にすがりつくばかりで、あいつを助けようなんて、カケラも思っていなかった。申し訳なかったと思うよ、今なら、多少はな」
紅院が本当に望んでいたのは『戦力』ではなく、
自分達を助けてくれる『救いのヒーロー』。
彼女は、ヒーローの勝利を願う『ヒロイン』として、
『守られる側』になる事を望んでいた。
「当時の俺みたいな、『助けてくれ、助けてくれ』って、ピーピー泣きわめくだけのゴミを必死になって守る方がおかしい」
――あんた、男なんだから、私達を守ってよ――
「そう言いたくなる気持ちは、むしろ当たり前」
そこで、砦は、
トコの目をジっと見つめる。
「……つまり、トコ……お前が、おかしいんだ……お前は、狂っている……」
数多の想いを込めて、砦は、ボソっとそう言った。
「お前という、イカれたバカ女がいたせいで、俺は200年も駆けずり回る羽目になった……正直、俺はお前を恨んでいる」
「誰がバカ女や、しばいたろか、クソボケが。てか、なんで、必死こいて守ってやった相手から恨まれなあかんねん」
トコの反応に、
「はは……」
砦は、一度だけ力なく笑って、
「クソ以下のゴミだった当時の俺は、何の役にもたたないどころか、豪快に足を引っ張りまくっていた、が……お前は決して俺を見捨てなかった。時には、自分の命を張ってまで、俺を守ってくれた。take0の時とか、お前、俺をかばって死んでいるからな」
「……」
「死ぬほど情けなかったが、震えるほど嬉しかった。壊れるほど憧れた。――だから、ここまで這いずってこられた」
「……」
「守ろうと思った。絶対に。何をしてでも……何を捨ててでも……強くなって、お前のヒーローになろうと決心して、必死にあがいてきた……が、結局、俺はただのヘタレ泣き虫のままだった。多少は成長したつもりでいたが、想定外の困難に苛まれるたびに、みっともなくオロオロしてばかり……」
「想定外って……何があったん?」
「それも、俺のミス……俺の弱さが原因で起きた……俺は……何も変わっちゃいない……」
★
take70
――『砦と黒木』
『おっ、あった、あった。ドライブ強化プラン。これで、ルナの瞬間火力が一段階強くなる。助かったぜ、黒木。協力してくれて、ほんと感謝している』
『あの、砦さん。一つ聞きたいのですが、どうして私に協力を求めたのですか?』
『ここの宝箱を取るには、携帯ドラゴンが二匹いるからってちゃんと言ったよな? 人の話を聞いていないのか?』
『そうではありません。なぜ、トコさんや美麗さんではなく、私に協力を請うてきたのかと聞いているのです』
『take50の時に、むりやり結婚させられて以降、紅院の好感度は、極力稼がないように気をつけているから、あいつに頼むのはありえない。トコは……』
『トコさんに頼まなかった理由はなんですか? あなたの話が全て事実なら、あなたはトコさんの為に、もう150年近くも戦い続けてきたのでしょう? それほどまで彼女を愛しているのなら、その愛するトコさんと出来るだけ一緒にいたいと考えるのが普通だと思うのですが?』
『んー……あいつさぁ……やめろって言うんだよ』
『やめろ――ですか?』
『もう苦しまなくていいって。俺が苦しんでいるのを見る方が辛いって。もうやめてくれって、すがりついてくるんだ。泣きながら、もう時間跳躍はするなって。……だから、take30くらいから、俺はあいつに、俺の状況を言っていない』
『……なるほど。トコさんなら……確かに……』
『あいつ……なんていうか、優しすぎるよな? 正直、頭おかしいんじゃねぇかなって思う。俺が苦しんでいる姿を見るのは、自分が死ぬより辛いとか本気で言うんだぜ? マジで意味がわからねぇ。あそこまでいくと、もはや、気持ち悪いとすら思うぜ。優しいとかじゃなくただの病気だ。ゴリゴリのキチ〇イ。死ねばいいのに』




