34話 カッコイイヒーロー。
34話 カッコイイヒーロー。
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――『砦と薬宮。2016年11月。B級GOO戦後』
『大丈夫か、砦。死んでへんか?』
『うっ……うぅ……こ、怖かったぁ……死ぬかと思ったよぉ……ふぇぇ……』
『あんた、ほんま泣き虫やなぁ』
『ご、ごめん……ごめんなさい……本当に、ぼく……役立たずで……』
『まあ、でも、そう思えるんやったら、まだ可能性はあるな』
『? ……可能性?』
『今回の戦いで、あんたは、ビビリ倒しながら、号泣しながら、それでも、必死に、あたしらにくらいついてきた。あんたは、きっと強くなれる。確かにあんたはドヘタレ泣き虫やけど、奥歯をかみしめて、前を向いて、ここまで、ちゃんと自分の足で歩いてきた。それは、可能性のないクズには出来ん事や』
『く、薬宮さん……』
『あたしには見えるで。いつか、あんたが、いろんな絶望を乗り越えて、一人前の男に成長して、少年雑誌の正統派ヒーローみたいに、困っとる誰かをカッコよく守っとる姿が』
『ぼ、ぼくなんかが……そんなのになれる訳……』
『砦、あたしの呪いが強制的に発動するまで半年切ったんは分かっとるな?』
『……ぅ、うん……』
『結局、呪いを解く方法は見つからんかった。手掛かり皆無のこの閉塞状態、半年以内に解けるとは到底思えん。つまり、もう、あたしは、あんたを守ってやれんっちゅうこっちゃ』
『……』
『心配せんでも、さっき言ったように、あんたには可能性がある。あんたは、いつか輝ける。自分の身だけやなく、他の誰かも守れるヒーローになれる』
『ぼくなんかが……なれる……わけ……』
『あんた、自分では気付いてへんのかもしれへんけど、委員会に所属しとるヤツの中で、どう考えても、あんたが一番、携帯ドラゴンの扱いが上手いからな。普通に天才やと思う。もしかしたら、あんたなら、いつか、あのドアホ女――ミレーを守れるくらい強くなれるかもしれん』
『ぼ、ぼくが、あのバケ……紅院さんより強く? そ、そんなアホな――』
『できるかもしれんと思ったから、これまでずっと守ってやった。そういう、打算が働いてへんかったら、流石に、他人のあんたを、ここまで必死に守ったりせぇへんよ』
『う、うそだ! も、もしかしたら、ぼくには才能みたいなモノが多少はあるのかもしれない。けど、薬宮さんは、ぼくにそんなモノがなくても、きっと――』
『水かけ論をする気はない。あたしの残り時間は少ない』
『……っ』
『今やなくてええ。あたしが生きとる間に見せてくれなんて無茶も言わん。いつかでええから、カッコええヒーローとして、あたしの家族を、親友を、この世界を守ったってくれ。頼むわ、砦』
『ぼく……ぼくは……』
『それになぁ、もし、あんたがヒーローになれれば、あんたを守り続けてきたあたしの人生にも、それなりの意味や価値があったって思えるやろ? 冥府で思いっきり自慢させてくれや。あの、ごっつカッコエエ救世主を育てたんはあたしやで、って』
『……』
『今後、あんたが守った命の一つ一つが、あたしの誇りになる。それを忘れるな。いろんなヤツに、あんたのカッコええ所を魅せつけたれ。それが、結果的に、あたしの利益に繋がるんやから。くはは、流石、あたし。あこぎやわぁ』
『……わかった……み、見せるよ……カッコいいところ……』
『よぉ言うた。――ぁ、時を超えて聞こえてきたで。あんたを称える大勢の声が』
『他の誰かなんて、どうでもいい』
『ん?』
『必死に頑張って、ヒーローになってみせるよ。でも、それは、紅院さんのためとか、世界のためとかじゃない……薬宮さんのために……薬宮さんだけのヒーローになるためだ』
『……』
『ぼくが、あなたを守る! あなただけにカッコいい所を見せるんだ! あの世になんて行かさない! 絶対に!!』
『あたしには、そう言ってくれるヤツが一人はおる。その事実があるだけでも、あたしの人生には、確かな意味と価値があった。そう思えるわ』




