30話 推察2。
30話 推察2。
「あ、あのね……あくまで私の想像なんだけど、聞いてくれる?」
「ん? なんやねん」
「昨日、教えてくれたよね。トコちゃんは『呪い』にかかっているって」
「あ、ああ、そうやけど?」
「あの人、もしかしたら、トコちゃんの呪いを解こうとしているんじゃないかな……たぶん、命がけで……」
「また、えらい、ブっ飛んだ説を持ちだしてきよったな。なんで、その推論に至ったんかほんまに謎やけど、とりあえず、仮にそうやったとしても、せやから、なんで嫌われたがっとんかサッパリやと――」
「とっても短い付き合いだけど、それでも……『分かる』よ」
「は? 分かるって、なにが?」
「トコちゃんは……優し過ぎる」
「なんや、急に持ち上げてきて。言うとくけど、あたしを褒めたかて、なんも出てぇへんで。てか、そもそも、まず、あたしは、別に優しかない。自分で言うんもどうか思うけど、あたしは、かなりピーキーで醜悪な性格をしとると――」
「そんな風に照れて悪ぶっているだけで、トコちゃんは、苦しんでいる人を助けるためなら、自分がボロボロになるのを選んじゃう優し過ぎる人……あの人は、多分、それが分かっているんだと思う」
「……反論の余地で溺れてしまいそうな意見やな。ナオ。脳内お花畑も大概にしとけや。見てみ、サブイボ出てきてんで。ほんま、勘弁してくれや」
そこで、学美が、
「ナオさん、つまり、あなたは、こう言いたいのですね? 砦さんは、トコさんの呪いを解くために命がけで闘っている。けれど、命がけで奮闘している事を『優し過ぎるトコさん』が知ったら悲しんでしまう。だから、自分の本心がトコさんにバレないよう徹底して嫌われようとしていると」
そうまとめられた意見を聞いて、
トコは、やれやれとかぶりを振った。
「はっ、そこまで男に尽くされるとは、あたしの美貌も行くとこまで行ったって感じやなぁ。流石、あたし。口だけのツミカとは格が違った……って、アホか。そんな事がありえてたまるかっちゅーねん」
「んー、まあ、でも、オメガ究極美少女の罪華さんほどじゃないとはいえ、トコてぃんも、98点くらいの美少女だから、『薬宮トコのためなら、とんでもない邪神様に剣を向ける事も厭わない』みたいな人がいても、おかしくはないかもしれないにゃぁ」
「……悪ノリにかぶせてくんな、ぼけぇ。てか、どうでもええけど、あたし、どっから2点も引かれてんの? あたし、完璧な美少女なんやけど?」
「おっぱいが足りないのと身長が低すぎるのが問題だにゃぁ。罪華さんは、身長170センチ以下と、貧乳にはマイナス点をつける事にしているんだにゃぁ。ちんちくりんに生きる価値なし。Gカップ以下は、飛べないブタだにゃぁ」
「……あたし、ただのブタなんかい。よぉ98点も貰えたな……」
トコは、疲れたように頭を抱え、
「どいつもこいつもアホばっかりぬかしよってからに。状況を考えぇや。ぼけかすぅ」
「うーん、でも……奈桜の仮説は、割と府に落ちたわね」
「はぁ? おいおい、ミレー。おどれ、いつ頭打ったんや。ったく、この糞わけわからん状況下で脳味噌バグらせるとは、ほんま使いもんにならんやっちゃで……ちゃんと今日中に精密検査受けぇよ」
「私も、最初の意見をひっくり返すようですが、可能性だけならゼロではない仮説だと思いますよ。もちろん、間違いなくそうだと言い切るつもりはありませんが」
「……正気か、お前ら。よう考えぇ。そんな男、おる訳ないやろ」
「私も、流石に、それは妄想が行き過ぎているような気がしますが、もし、万が一、この推測が正しかったとしたら、どうしますか?」
「……せやから、ありえんって」
「トコさん、私は可能性の話をしているのですよ。確かに、ナオさんの推測は、乙女ゲージが天元突破しているクソ妄想かもしれませんが、当たっている可能性もゼロではないのですよ」
「……」
「トコ。試しに、一度、彼とサシで話しあってみてくれない? ここでぐだぐだと話し合っていても、答えは見つからないと思うし」
「……はぁぁ……まあええわ。あいつには言いたいことが山ほどある事やし……とりあえず、明日、声をかけてみるわ」




