21話 砦、力を貸して。
21話 砦、力を貸して。
頭を抱え、ギリギリと歯をかみしめ、しばらく自分を責めてから、
「……バカが。反省なんてしている余裕はねぇだろ。今は、ヨグの嫌がらせをどう回避するか。どう修正すれば、想定通りのトゥルーエンドに辿り着けるか。それだけを考えろ」
頭の中で、いくつものプランや、それに付随する問題、
数多の拭いきれない危惧が溢れかえっていく。
――その途中で、
「きゅいっ」
ルナが自動召喚された。
かわいらしく、机の上の置き時計を持ち上げて、砦に向けてくる。
――時刻は、15時50分。
「マジか……もうこんな時間。……クソったれ。まだ、今日の分のヨグの嫌がらせに対する対処策すら練りあがってねぇのに……くそぉ……」
両目をギュっと閉じて、
「はぁああ」
と深く長いため息をつき、
「つぅか、そもそも、今日のイベントは起きるのか? 今から起きるはずのイベントは、『また南雲がさらわれてしまう』というものだが……今の南雲は、なぜか携帯ドラゴンが召喚できてしまう。奉仕種族じゃ、携帯ドラゴンには敵わないから、普通に考えると、さらわれるはずがねぇ」
となれば、イベントは当然起こらない。そうなると、それはそれで問題がある。
「これは、どのイベントでも言えることだが、未来の知識をフル活用して、起きるはずの事を『根本』から無かった事にするという対処をすると、アリア・ギアス(因果の揺らぎ)が狂うのか何なのか知らないが、逆に、おかしな面倒が多発する。ヘタに『南雲がさらわれないよう護衛』したり、『南雲をさらう予定だった奉仕種族を事前に処理』したりすると、その後、なぜか、妙な面倒事が起きるという事がしばしばだった」
仮に南雲の救出に失敗したとしても、
召喚されるのはF級(最弱)GOOであり、
紅院たちだけでサクっと狩れてしまうため、
これまでの数十回では、幾度となくスルーしてきたゴミイベント。
危険度が低いイベントは、そのままサラっと起こさせておいて、
結果だけを華麗に処理するのがベスト。
それが、この200年で得た最良の攻略方法。
「今日のイベントでは、どうするのがベストだ? ここまでのズレを修正する事に大部分を置くとすれば、むしろ、南雲がさらわれるよう、奉仕種族に手を貸した方がいいのか? いや、だが……くそぉ……不確定要素が多すぎて、対策が立てられねぇ……」
――その時、
ピーン……ポーン。
と、家のチャイムが鳴った。
無視しようかと思ったが、その直後、
ピンポンピンポンピンポンと八回連続でチャイムを鳴らされ、
イラっときた砦は、階段を下り、玄関を開けて、
「はい?」
と、怒りを込めた声で対応。
――そこにいたのは、
「……力を……貸してほしいの……」
(?! ……紅院? トコ……他の連中も……)
玄関先には、美少女達が並んでいた。
見慣れたメンツ。
しかし、その中には、
(南雲だけいない。つまり、二面のイベントは、いつも通りに発生したって事か? しかし、携帯ドラゴンを召喚できる今のあいつが、なぜ? それに、まだ、さらわれる時間じゃ……)
紅院は悲痛な面持ちで、
「実は、今日の昼休みに……奈桜がGOOに、さらわれてしまったの」
(GOO? ……ヨグが召喚したのか? ……まあ、それならば、南雲がさらわれてもおかしくはない。一応の筋は通っている――が、しかし、ヨグが、その行動を起こした理由が分からない。トコならともかく、南雲なんかさらったって何の意味もないはず……)
「奈桜がさらわれたすぐ後に、私たちの元に、GOOから脅迫文みたいなのが届いて……すぐに助けに行ったのだけれど……」
「ぁ? なんだ? 助けに行ったけど、なんだ?」
言いながらも、砦の頭は混乱していた。
(ていうか、脅迫文ってなんだよ。あいつら、そんなもん書かないだろ……さらわれる時間も全然違うしよぉ……ぁあ、もう……訳わかんねぇぞ……クソがぁぁ……)
「そこには、また、昨日みたいに、十体のGOOがいて……あたしたちだけじゃ――」
(また十体召喚かよ、芸がねぇなぁ………………まさか、それしか出来ないのか?)
などと考察していると、
美少女たちが、そろって頭を下げた(罪華だけワンテンポ遅れた)。
「お願い。力を貸して。あの子を助けられるのは、この世で、あなたしかいない。奈桜は貴重な戦力の一人。失う訳にはいかないの」
砦は、無意識に、左手親指の爪をギリっと噛みしめ、
(どうする……どうする……)
チリチリと脳みそが燃える。
胃がキュルっと痛んだ。
(いっそ、南雲を捨て駒にして、トコの好感度を限界まで下げるか?)
砦にとって大事なのは薬宮トコだけ。
最悪、トコ以外は誰が何人死んでも構わない。
(南雲に対しての情も、take0の時は比較的仲が良かったから、勿論、ゼロって訳じゃない……が、トコに対する気持ちと比べれば、あいつに対する情など、カスみたいなもの)
結局の所、トコが生きていればいい。
トコさえ生きていればいい。
――と、そこで、
(っ……いや、ダメだっ)
砦は気付く。
このプランは使えない。
(俺が南雲を切っても、トコは南雲を見捨てない。勝ち目がないと分かっていても、南雲を助けようと突っ込むだろう。そうなれば、トコは確実に死ぬ。こうなったら、俺が、南雲を直接殺すパターンに移行……いや、それだと、死を覚悟でトコが俺を殺しにかかってくる可能性が濃厚。対処は不可能じゃないが、すこぶる鬱陶しい。……ちぃいっ……マジで、トコって、めんどくせぇなぁ)




