18話 異次元砲。
18話 異次元砲。
ウムルは、ギリィっと奥歯をかみしめて、
「……恥をかかせやがってぇ……た、ただで済むと思うなよ……ガキがぁ……」
指をパチンと鳴らし、ほかの九体の元まで瞬間移動をすると、
「クソガキ……確かに、貴様はただのゴミじゃない」
剣を捨てて、両手を砦に向け、
「だが、所詮、貴様ら人間とは、核魔力の絶対量が違うという事を教えてやる!」
そこで、ウムルは、背後で待機しているGOO達に、視線を向けて、
「おい、てめぇら、魔力をよこせ。異次元砲を撃つ」
指示を受けると、すぐに、九体のGOOたちは、
ウムルに右手を向けて魔力を流し込んでいく。
もともと膨大な魔力を持つウムルの魔力がどんどん膨らんでいく。
「ふはは! ガキが図に乗りやがって。細胞一つ残さず消し去ってやるからなぁ!」
「マルチブーストかけただけの異次元砲で俺を殺す? 本気で言ってんなら、病院行ってこい。保険証、持ってるか? なけりゃ、貸してやるよ。あまりに可哀そうだからなぁ」
ケタケタ笑いながらそう言いつつ、砦は、チラっと五人の美少女達の位置を確認する。
(異次元砲というのがブラフで、範囲拡大を積んだ拡散量子砲を撃たれた場合、この位置だと庇いきれないな)
ゆっくりと、彼女達を守れる位置まで歩くと、右手の関節をポキポキっと鳴らして、
「この空間を守れ、ジェネラル・ドリームオーラ/クラスS」
右手掌を天に向けて、魔法を行使する。
ジェネラル化させる事により、普通に使えば使用者の体だけを守る小域的なオーラが、
砦を中心として、ドーム状にグワっと広がっていく。
――それを見て、ウムルは、
「おぞましいほど強大な障壁だなぁ! だが、無駄無駄ぁ! 貫いてやらぁあ!! 死ねぇええ、クソガキィィィ! 極大化・異次元砲ぉお!!」
次元を裂く咆哮。
時空間断層の破壊と再生の連鎖圧縮。
その半永久エネルギーを統率する神羅の維持。
周囲の魔力場がヒビ割れて大気が鳴動するほどの、圧倒的な火力を誇る照射。
砦は、その絶望を目の当たりにして、顔を歪めた。
恐怖から?
違う。
呆れから。
(マジで、何の工夫もない、ただ強化しただけのゲロビを撃ちやがった……もしかして、あいつ、バカなのかな?)
ギュルンとねじ曲がるような音がした。
異次元砲は、砦のドリームオーラにぶつかった瞬間、
空間を歪ませるほどの衝撃波を出した――が、ほぼ一瞬で掻き消えてしまった。
ズズズっと引きずり込まれるような音がして、直後、その場から一瞬、音と色が消えた。
すぐに、この場は、いつもの三次元に戻る。
唖然とした顔をしているウムルが、ボソっと、
「な、なに? なんだ……? なぜ、異次元砲が、無効化され――」
「あれだけバカみたいに時間かけて溜めたゲロビが、俺に通ると本気で思っていたのか? お前のコアオーラがゼロコゲなのは既にバレてんだから、普通に魔周波数を合わされて、吸収されるに決まってんだろ。魔法戦、ナメんな」
「魔周波数を合わせた? ……ば、バカな……そんな事が出来る天才などいる訳……」
「天才だぁ? 何を大げさな。波形を合わせるくらい、take5ぐらいの頃には出来てたっつーの」
「ていく……?」
「もういいや。しょーもない。頭カラっぽのサルをからかってもつまらねぇ」
そう言うと、砦は、右手に、『罪華が使っていたキャノン砲よりスマートでコンパクトだがフォルムだけは妙に凶悪なライフル』を取り出し、その銃口をGOO達に向けて、
「サルでも理解できるよう、優しく魔力の正しい使い方をレクチャーしてあげましょう。レッスン、ワン。何の攻撃をするかは、たとえ、詠唱型であってもギリギリまで相手にバレないようにしましょう。リピートアフターミー」
「ちょっ、まっ……わ、わ、わかった……クソガキ、いや、えっと、確か砦才悟だったか? 砦才悟……取引だ。私たちはこのまま消える。だから――」
「レッスン、ツー。バレたら、吸収されて、跳ね返されます。魔法の中には吸収からの蓄積・放出のコンボもあります。気をつけましょう。リピートアフターミー」
「やめっ――」
「リリース。――ルルイ・ディメンションバースト」
先ほど、ウムルが放った一撃よりも遥かに強大な暴力の放出。
だが、荒々しさなどはなく、静かでスマートな一閃。
無駄なエネルギーが込められていない証。
アリを踏みつぶす際に、粉塵が舞い上がるほど足に力を入れる事はないのと同じ。
魂魄を昇華させる柔らかなノクターン。淡白な破壊の照射が、
「「「「「ぐぁああああああ!!!」」」」」
十体のGOOを、まとめて、跡形もなくけしとばす!!
影すら残させない、無慈悲な圧殺。
土煙がモクモクと揺れて、死の残滓がユラユラと霞む。
――スゥっと全てが晴れた時、そこには何もなかった。
世界が静かになって、お上品に落ち着いた夜だけが残った。
濡れたタオルで拭ったような空には、キラキラとした星の祭典。
一際美しいのは、もちろん月光の淡い煌めき。
――そんな、静かな色に染まる時空ヶ丘学園を一瞥してから、砦は、
(さて……じゃあ、気合いを入れ直すか。ここからが本番だ……)
心にガツンと気合いを入れていた。
GOO十体の掃討など、今の砦からすれば、これから挑む難易度の高いミッションを完璧に遂行するための準備運動にもならない。
(よし……行くぞ)
砦は『とんでもないクズ』にしか見えない『下卑た笑み』を浮かべ、
「これで、ノゾいたのはチャラだな」
そう言い放った。
――続けて、
「いや、命を助けたんだから、裸を見たくらいじゃ報酬としては足りねぇよなぁ」
ブツブツとそう呟いてから、ポンと手を打つと、
「よし、メスブタ共、全員、この場でパンツを脱いで俺様に献上しろ」
――カス野郎の最低発言を受けて、神話を狩る美少女達は、
先ほどまでとは趣の異なる唖然とした表情を浮かべた(罪華だけは、ポケーっと、よそ見をしている)。
「どうした? はやく脱がんかい。ん? まさか、俺が脱がしていいのか? おいおい、そこまでサービスしろとは言ってないぞ? はっはっは」




