15話 連携。
15話 連携。
特攻をしかけてきた彼女の姿を見て、ウムルは、
「おっと……変身だけではなく、『存在値増幅装置』まで使えたのかい? それは聞いていない……が、まあ、いい。――我が身を守れ、ドリームオーラ!!」
「バリアは、使わないんじゃなかったのかしら?!」
叫びながら、右手に接続されている『燃え盛る剣』を全力で振り下ろす。全てのバーニアが火を吹いて、斬撃速度が爆発的に上昇する。
ウムルは魔力を増幅させた右腕で、紅院の一撃を防ごうとする――が、
「いぃ?! なんだとっ!」
豪速で駆動している無数の刃が、ギギギギィっと殺意の咆哮をあげる。
「ぐぬぅ……ちぃ!」
耐えきれなかったウムルの体は、
ズザザザザァァァッ!!
と荒々しく切断された。
切断部分がグチャグチャになっている『腹部から下』が力なく地面へと落ちる。
ドチャっと生々しい音がした。
「――ちぃっ………………はっ、ははっ……はははっ……す、素晴らしいじゃないか。褒めてあげよう。なかなかのコズミックホラーだった。まあ、だが、しかし、私の生命力を削りきれるほどでは――」
「ミレーだけやったらなぁ!」
ひそかに回りこんでいたトコが、
右手に召喚させている毒々しい形状のナイフを、
ウムルに向けて全力投擲する。
ウムルの額にグサっと刺さる猛毒のナイフ。
その直後、ゾワゾワっと這いまわるように、ウムルの全身に毒がまわっていく。
「っ……麻痺毒か! はっ、このぐらい余裕で抵抗……抵抗……あ? な、なぜ……」
「ただの毒とちゃうで。『サマエルピス・ハックギアシステム』を発動させた抵抗貫通特化の神聖猛毒や。あたしが使える最強の切り札。トランスフォームできんからぁ言うて、ナメたらアカンってこっちゃ」
「まさか『上位魂魄処理機構』まで使えるとは……って、ぃ、いかん……本当に動かないじゃないか、ちっ。だが、所詮は数秒の麻痺……すぐに解毒――」
「いまや、ツミカぁ! フルゼタを、ぶっぱなしたれ!」
ウムルは、眼球だけを動かして、トコの視線の先にいる女を見る。
己に対し、全長三メートルを超える巨大なキャノン砲の銃口を向けて、複数の魔法導火線とも言うべきジオメトリを同時展開させている罪華。
「うにゃぁ……このフルパレードゼタキャノンって、火力は高いけど、発射までに時間がかかりすぎるのがネックなのにゃぁ……あと、FCSが使えなくてマニュアル射撃しかできないから、動いている相手には、ほぼ当たらないんだにゃぁ。こんな、クソ武器が切り札の罪華さんって、もしかしてザコなのかにゃぁ? だとすると悲しいにゃぁ」
「ぶつくさ言うとらんと、はよ撃たんかい!!」
「まだ撃てないにゃぁ。これ、エネルギーの装填に凄く時間が……あ、撃てるようになったにゃぁ。トコてぃん、ここまで一生懸命頑張った罪華さんを褒め称えてもよろしくってよ」
「はよ撃てぇえええええ!!」
「ブラストオフだにゃぁ」
重い引き金を引くと、周囲の大気を震わすほどの轟音、
――ズガンッ!!
と豪快な音がして、
「ぐぁああああ!!」
豪速のエネルギー弾がウムルを襲った。
極太の照射。
一瞬、世界が絶望の光で包まれた。
大気が鳴動する。
空間が一部歪んで、バチバチと黒い電磁放射が舞う。
キノコ雲が晴れた時、ウムルは黒こげで地面に転がっていた。
「やったかにゃ?」
「フラグたてんな! GOOは、どいつもHPがアホみたいに多いねん! あれだけやと、どうせ、まだ死んでへん! 連射できるヤツで追撃せぇ! ミレーは、リミッター解除の反動で、しばらく動けへん。あたしらだけでやるしかない!」
両手に、神聖猛毒を積んだナイフを召喚して、
「時空魔法が使えるウムルさえ死ねば、逃げ切れる可能性はある! 生きとりさえすれば、どうにか出来る可能性はゼロやない! 希望はある!」
システムは、魂魄回転率の限界値を強制的に引き上げる機能。
その精度は使用者の覚悟で変わる。
それを知っているトコは、必死に自分を鼓舞して、ハックギアシステムの効果を上げようとしている。
「全員で生き残るで! マナミ、ナオ! あたしに、ありったけの強化魔法をかけぇ!! 絶対に削りきったる!!」
トコの指示に、全員が従って行動しようとした――
――その寸前、ウムルが、
「イグリィ! 全力の再生魔法をよこせ!!」
命令を受けると、待機していた九体のGOOの内一体が右手をウムルに向けた。
そして、ブツブツっと呟くと、緑の光が、ウムルの体を包み込んだ。
腹部から下を失い、まっ黒コゲでボロボロだった体は、
一瞬で、元のツヤツヤとした黄金ヴェールに包まれる。
ホコリ一つついていない綺麗な肉体。
まるで何もなかったように、すっかり元通り。
ウムルはゆっくりと優雅に立ち上がり、
「ふぅ……いやぁ、素晴らしい。私一人で対峙していたら、死んでいたかもしれない」
その、かすり傷一つない姿を見て、トコは絶句する。
小さい声で、
「……手ぇ出させへん言うたやないかぁ、クソ嘘つき野郎がぁ……」
「くくっ。私をあれだけ追いつめた君達に敬意を表し、後ろにいるGOOたちを紹介しよう。全員、回復魔法のスペシャリストだ。三体ほど蘇生魔法が使える者もいる」
「……そ……せい……」
「そう。つまり、仮に、ウッカリ死んでしまっても、サクっと蘇れるというわけだ。多少、生命エネルギーを失ってしまうが、まあ、所詮はそれだけの話さ。君たちを殺しきるのに不備が生じる訳ではないから問題は何もない」
「……」
「さて、それでは戦いの続きといこうか。おそらく、強く美しく聡明で慎重な君たちの事だ。まだまだ、切り札はあるのだろう? さあ、次は、どんな素晴らしい攻撃を見せてくれるのだろう。ああ、楽しみだ。私は、ここから何度死にかけるのかな?」
「クソっ……たれが……」
トコは、必死に涙を我慢していた。
これまでの人生で、泣きたくなるような事は山ほどあった。
だが、両親が強盗に殺されて以降、彼女は泣くのをやめた。
両親の遺産に群がってきたクズ共との戦いは、死にたくなるほど辛かったが、トコは決して泣かなかった。
だから、今だって、我慢はできる。
――死んでも泣いてやるものか!
「おや? どうしたのかな? はやく攻撃したまえ。……ん? まさかっ! まさかとは思うのだが……まさか、もう切り札は全て使いきってしまったのかな?」




