12話 ヨグ・ソトースの謀略。
12話 ヨグ・ソトースの謀略。
この日この場所に召喚されるのは、『ロイガー』という名のE級GOO一体のはず。
これまで、それが狂ったことは一度もない。
なのに――
「……本当に、一体どうしたんだ? 何がおきている?」
と、その時、
『――聞こえるか、砦才悟。人の限界に達した者よ』
「テレパシー? いったい誰が……って、今の声、まさか」
『そう。私だ。全にして一、一にして全なる者。神の中の神。万能なる時空の王』
「このおかしな状況、てめぇの仕業かぁ……ぃ、いや、でも、なぜ――」
『私は時空を司る万能の神。【銀の鍵】の製作者。どの時空にも存在している混沌の媒介』
「だから、やり直しても、他の連中と違い、てめぇの記憶はリセットできない――そんな事は想定内だ。俺が問題視してんのは、てめぇらアウターゴッドは、『ニャル』を除く全員が『認知の領域外』とやらに封印されてんじゃねぇのかってこと。召喚されたわけでもないのに、てめぇ、なんで、俺と普通にお喋りしてんだ」
『私クラスともなれば、たとえ封印されていても、無力ではない。それだけの話だ』
「……なっ……封印されていても現世で魔力を使えるってのか。ば、ばかな、ありえねぇ。神の封印ってのは、俺らで言うところの寝ている状態みたいなものだって、魔道書に書いて――」
『当然、封印されている今の状態では無限にお喋りできる訳ではない。私を拘束しているアリア・ギアス(不退転の自縛)は、私のワガママにはそこそこ甘いが、私の自由にはとことん厳しいというヤンデレさんでね。さっそく本題といこう。貴様のログを調べてみたが、実に面白い経歴の持ち主だ。本気で興味が沸いたので、今後は、貴様に、色々と【協力】をしてやろうと思っている』
「きょ、協力だぁ?」
『そうだ。放っておいたら、あの女――薬宮トコだったか? あの女は、貴様の苦悩も絶望も知らないまま死んでしまいそうだ。それでは貴様が、あまりにも不憫。あの女には、砦才悟という【自分のために命をかけて戦った男】の事を、キチンと知っておく義務がある。という訳で、貴様に、あの女の前でカッコイイ所を見せられるチャンスを与えてやった。流石、私。なんと慈悲深い……くく……それでは、再会を楽しみにしているぞ』
感覚で、テレパシーが切れたのが分かった。
砦は、ワナワナと肩を震わせ、
「ぉ、俺で……遊んでいやがる……」
ボソっと、憎々しげにそう呟いた。
血走った目で世界を睨みつける。
憤怒と絶望をこらえて、
(状況は理解した。……ヨグ……てめぇが何をしようが、とことん抗って、何がなんでも、完璧なトゥルーエンドに辿り着いてやる。どんな嫌がらせも、理不尽も、苦難も、すべて乗り越えてやる……俺の200年をナメんじゃねぇぞ!)
★
――紅院は絶望していた。
「な、何よ……あの数……」
第五校舎の屋上から、身を低くして、認識阻害の魔法を全力で施行し、
GOOが出現したと思われる第二運動場を見下ろしてみると、
そこには、地面に広がっている魔法陣の上に、とんでもない数の異形が出現していた。
サイズとフォルムは人間型だが、
どいつもこいつも、角が生えていたり、翼が生えていたり、尻尾が生えていたりと、
バラエティに富んだ禍々しい姿をしている。
黒木学美が、ブルブルと震えながら、
「ご、ろく……じゅ、十体……GOO大戦の時の……倍……いるんですけど……」
「あの時は先輩19人とカズミが死んだなぁ……今回は……何人死ぬんやろうなぁ……」
K5(キ○ガイ五人組)の一人だった、久剣一美。
西日本最大の超大地主『久剣家』の長女であり、
剣道と空手の両方で全国大会連覇記録を持っていた武闘派美少女。
己の強さに対する過剰な自信が災いして、早死にしてしまったバーサーカー。
「ね、ねぇ、つ、罪華ちゃん……あ、あんな、たくさん……ば、ばけものが、じゅ、十匹もいて……か、勝てるの?」
「罪華さんがいれば楽勝だにゃぁ」
「ほ、ほんと?!」
パァァっと表情を明るくする南雲に、罪華は、いつものノリを崩さず、
「罪華さんは、お菓子作りの達人だにゃぁ。ガトー・ド・ヴォワイヤージュぐらい、二分もあれば余裕で作れるにゃぁ。さあ、新鮮なピスタチオを準備するにゃぁ!」
「だ、だめだ! 罪華ちゃん、発狂してる!」
「それは今に始まった事やないから、ほっとけ」
そこで、トコが、紅院に、
「ミレー。一応、言うとくけど、流石に、あの数は、あたしらだけやと、どうにもならへんからな?」
「確かに、あの数を殲滅する力なんて、今の私たちにはないわね」
紅院は、ギリっと歯を食いしばって、
「ねぇ、トコ。仮に、私達が全滅した場合、この先、どうなると思う?」
「あたしら、神話生物の『駆除係』がおらんようになれば、GOOが延々に召喚され続けて、人類VS神話生物のラグナロクが起きる。数週間と持たずに世界中の軍隊が壊滅。一か月も経たん内に人類滅亡。神話生物の天下が始まる……か、もしくは、破滅願望主義のアホによりアウターゴッドが召喚されて、地球消滅。まあ、そのどっちかやろうなぁ」
「複数の魔道書で示唆されていた、カタストロフが実際に起こる……という事ですね……」
「ねぇ、トコ、どうにか人類滅亡を回避する手はないのかしら?」
「そうやなぁ……M78的な星雲に救援信号を出して、ウルトラな兄やんが助けにきてくれるんを待つとかどうや? 問題は、あれだけの数を三分で殲滅できるかどうかやな。スペシウム的な光線が、あいつらを一掃してくれる事を、全員で祈ろうや。イア・イア、ツブラヤ! イア・イア、ツブラヤ!」
「つ、ついに、トコちゃんまで発狂しだしちゃった! 地球、終わった!」
「トコさん、現実逃避している場合じゃありません。本当にどうします?」
「まあ、こうなってもうたら、手段は一つやろ。神話生物に対する防衛予算うんぬんや、携帯ドラゴンの利権どうこう、民間人の混乱を防ぐ為の情報隠蔽どうたらは、もう言うてられへん。これまで各国が水面下でやってきた、『未来』の為の主導権争いは今日にて終了。ここからは、全人類総出で、GOOの排除に全力を尽くすんや。……核の使用も検討せなあかんやろうなぁ……上位神話生物に効くかどうか知らんけど……」




