11話 とびっきりの警戒音。
11話 とびっきりの警戒音。
「「「「きゅぅうううううい!! きゅぅううううううい!」」」」
「トコ、罪華! バカを言いあっている場合ではないわ。これ、ただごとじゃないわよ。ここまで大声で警戒音を出した事なんて、今まで一度もなかったわ」
そこで、紅院がシャワールームの外に飛び出した。
凄まじい速度。
理想的な前傾姿勢で、五秒とかからず校舎の外に出る。
彼女に続いて、他の美少女達も外に出た。
邪悪なオーラが駄々漏れている方へと駆けていく途中で、黒木が、
「……ま、まさか……出現したのは、上位のGOOでしょうか?」
「じょ、じょーいの、じーおーおーって何?」
いきなり走りだした紅院達の背中に、とりあえずついてきていた南雲。
――そんな彼女の問いに、トコが答える。
「メッチャ強い敵や。あたしらでも勝てるかどうか微妙の、最悪な相手」
「そ、そんなのが、今、近くにいるっていうの……う、うそ……」
そこで、紅院は、走る速度を落とし、
南雲と並走しながら、彼女の背中を軽く、バンっと叩いて、
「そんなに心配しなくてもいいわ。ここには、私という、最強の『神話狩り』がいるのだから。私ほどじゃないにしても、近い実力者のトコもいるし、学美や罪華だって、先の『同時五体召喚GOO大戦』を生き抜いた歴戦の神話殺し。どんな強敵だろうと、いつも通り……サクっと殺してやるわ」
その頼もしい発言を受けて、
南雲は、一瞬だけ悩んだものの、
しかし、即座に決意した表情を浮かべて、
「あ、あの……わ、私も戦う! この子も戦えるんでしょ? なら――」
「よう言うた」
薬宮は、そう言いながら、
南雲奈桜の頭を、
「ぃ、いたっ」
パンっと、軽くシバきあげてから、
イタズラな笑顔でニっと微笑み、
「南雲……いや、ナオ! あんたは、あたしの後ろから援護せぇ。そんで、なんかあったら、あたしを盾にせぇ。大事な新入りや。できる限り守ったる」
「ぁ、ありがとう……トコちゃん」
「もちろん、無理そうやったら速攻諦めて、あんたを肉壁にするけどなぁ」
「えぇ?!」
と、そこで、黒木が、紅院に視線を向けて、
「あっ! そういえば、美麗さん。さっきのノゾキ魔、放置して来てしまいましたが、良かったのですか?」
「ん? ぁ、ああ……緊急事態に動揺して、すっかり忘れていたわ」
「ほっとけ。今は、痴漢に構っとる余裕はない。無事に生きて帰れたら、その時に、あいつの両手両足をもげばええ」
「だから、過剰な制裁はダメですって! 腕と足を引きちぎるなんて、どう考えてやりすぎです! ガッツリと携帯ドラゴンを見られてしまったので、隔離対処は必須でしょうが――」
★
take0
――『砦と薬宮。2015年。五月。E級GOO戦』
『砦。あんたは、あたしの後ろから援護せぇ。そんで、なんかあったら、あたしを盾にせぇ。ようやく見つけた大事な新入りや。できる限り守ったる』
『あ、ありがとう、薬宮さん。すごく頼もしい!』
『ふふん、世界最高峰の天才で、極限を超えて慈悲深く、その上、美少女の中の美少女でもある、この薬宮トコを、無上の女神として崇め奉る権利を与えたろう!』
『あ、姉御、超かっこいい……あっし、一生、ついていきやす!』
『はっはっは、愛いヤツめ』
『………………く、薬宮さん、あの……なんか、ごめんなさい』
『ん、なんやねん、急にしょぼくれて』
『本当なら、男のぼくが、薬宮さんを守るべきなのに……』
『――ナメたことぬかすな。昨今では、男より女の方が強いんじゃい。てか、余計な事は考えんでええ。がむしゃらに生き残る事だけ考えとけ。……生き残って、成長して、そんで、いつか、マシになったら、そん時、あたしの盾として使いつぶされたらええ』
『つ、使いつぶされちゃうんだ……』
『光栄やろ』
『は、はい……』
『どうせなら、盾だけやなく、剣にもなってもらいたいんやけどなぁ』
『剣って……それって、つまり、薬宮さんより強くなるって事だよね……そ、そんなの、なれる気がしないよ……』
『はぁぁぁ……ヘタレやのう。あんなぁ――』
『け、けど、頑張るよ! 薬宮さんより強くなれるとは思えないけれど、これから必死に頑張るって事だけは約束する。心から誓うよ。せめて薬宮さんの盾くらいにはなってみせるって!』
『志の低いやっちゃなぁ。口だけでもええから、言うてくれや。あたしより強ぉなって、華麗に、カッコよく守ったるって』
『で、でも、そんな大言壮語は、きっと、ただの口だけになっちゃう――』
『ボケェ。目指してもない目標が達成できると思うんか? 大言壮語を吐く度胸も無いヤツなんざ、あたしの盾にもなられへん』
『う、う……うぅ、わ、分かったよ。薬宮さん。ぼくは、いつか、あなたよりも強くなって、華麗にカッコよく、あなたを守る!』
『生意気言うな、ヘタレがぁ!』
『えぇ??!!! ぁ、あなたが言えって――』
『実際に言われてみたら、めっちゃ腹立った。おどれみたいなビビリ泣き虫が、上から目線であたしを守るやて? 笑止千万! 屁ぇして寝とれ!』
『なに、この理不尽大魔王。守る気がなくなったんですけど――』
★
take100
トコ達がシャワールームから出ていった直後、
「ルナ、切ってくれ」
簡易召喚で呼び出されたルナは、すぐさま、砦を縛っている縄を噛みちぎる。
と同時に、砦は、両足を軽く上げ、腕を使わず、
背筋力だけで、タッッ! と立ち上がり、
「ルナ、索敵結果を表示」
命じられ、ルナは、背中にエアウィンドウを表示させる。
索敵結果を見て、砦の表情が、ググゥっと険しくなった。
「ぅ、そだろ。……はぁ? 警戒音のボリュームが異常に大きいとは思っていたが……A級以上のGOO反応が……10体? な、なんだ、これ……」
ありえない状況。
砦は、思わず左手で口元を抑えた。
「……ぃ、意味がわからん。今日召喚されるGOOはE級一体だけのはずだろう。これまで、それ以外の展開になった事はない。……い、いったい……」




