10話 あらゆる周のトコ。
10話 あらゆる周のトコ。
take0
『そんな顔すな、サイゴ。あたしはまだ折れてへん。あたしは! まだ! あんたの前に立っとる! 死ぬまで、あんたの盾をやったる!!』
take5
『サイゴ、もうタイムリープすな。これは命令や。聞いてんのか、おい!』
take15
『もう、あたしを守らんでええ! サイゴ! 聞け! 一番最初の時は、あたしがあんたを助けたか知らんけど、それ以降はずっと、あんたがあたしを守ってきてくれたんやろ。すでに、貸しは何十倍にもなって返ってきとる!』
take17
『あたしはあんたが大っきらいや! 二度とあたしに近づくな! ――近づくな言うてんねん! 人の話、聞けやぁ! ――ほんま、お願い……もうイヤや…… ――お願いやから、もう……あたしなんかのために……傷つかんといて……』
take25
『頼む……サイゴ……ほんまに、もう、やめて……壊れてまうよ……サイゴが、サイゴでなくなってまう』
take29
『サイゴ、あたしは頑張って生きたよ。精一杯生きたんや。大好きな人もできて、その人にいっぱい、大事なもんをもらえて……そんで、あの……ぁ、あかんなぁ、いつもみたいな雑言が出てけぇへん。……なぁ、サイゴ。あたし、あたしなぁ……』
★
take100
――『10分後』
着替えを終えた全員が集結してすぐ、
トコが、はぎとるように、砦のアイマスクを外した。
そして、右手に握りしめているサバイバルナイフの切っ先を、
砦の右の眼球に当たるか当たらないかというギリギリの位置にセットする。
「さて……まずは眼球をえぐりとる訳やけど、最初は右と左、どっちがええ? あたしは世界一優しい美少女やから、あんたに選択肢を与えたるわ」
「トコさんが、世界一優しい女の子? え? この世界って、修羅地獄だったんですか?」
「どういう意味やねん、マナミ、ごらぁ」
「そのままの意味ですよ、トコさん。眼球をえぐりとるなんて、流石にやりすぎですから絶対にやめてください。もちろん、ノゾキは許せない犯罪行為ですから、当然、この人には、それなりの社会的な罰を受けてはもらいますけれど、しかし――」
「あ? なにをヌルいことを言うてんねん。この究極美少女『薬宮トコ』の裸を覗いたんやで? 最低でも網膜と生殖機能は失ってもらわんと」
「オメガ究極美少女の罪華さんも覗かれた訳だからにゃぁ。トコてぃんだけならともかく、罪華さんまで覗かれたとなると……流石に、許す訳にはいかないにゃぁ」
「あんた、全然気にしてなかったやん。てか、なに、サラっと、自分を、あたしより上位の美少女に位置付けてんねん。どの角度から見ても、あたしの方があんたより可愛いやろ」
「あっはは! トコてぃぃん、あはははは!」
「なにを、『こら傑作やでぇ』みたいな顔で、わろてくれてんねん!」
そんな、自分の粛清方法について話し合っている彼女達の事などガン無視して、
砦は、全力の怪訝顔で、一人のオドオドした少女――南雲奈桜だけを見つめていた。
南雲は、恐怖心からか、事前に紅院から禁止されていた『携帯ドラゴン(携帯ドラゴンは世界最大級の機密事項のため、関係者以外に情報が出回らないよう、全力で隠匿されている)』を右手に召喚し、砦に向けて、盾にするように差し出していた。
(は? はぁぁぁぁああ?! な、なぜ、南雲が携帯ドラゴンを召喚できている?! あいつに契約適正はないだろ! ど、どうなってんだ……っ?!)
南雲奈桜は、携帯ドラゴンの召喚すらできない、ただの可哀そうな生贄要員。
それが、南雲奈桜という女子高生の揺るぎない絶対的ポジション。
(何かが歪んでやがる……あるはずのない罠の発動……南雲が携帯ドラゴンを召喚できているという、このありえない現状……いったい、なにが……)
「最終的にどうするか、それはひとまず置いておいて、とりあえず、パパに連絡するわ」
そこで、紅院は、砦を見下ろし、嗜虐的な笑みを浮かべて、
「私のパパは、『私に近づく男がいる』って聞いただけで激昂して、お抱えの一個師団を動かそうとするほど、私の事を超溺愛しているから、その愛する娘をノゾいた性犯罪者には、間違いなく激烈な制裁を下すだろう――とだけ言っておくわ」
(お前の親父がラリっている事くらい、お前よりも知っている。なんせ、『娘と結婚してグループを継げ』と命じられ、マジで一度、婚姻届に判を押すハメになった事もあるくらいだからな。紅院の好感度を無駄に稼いじまったあのルートは、マジで、しんどかった)
――『take50』の時の話。
不慮の事故で、かなり序盤にトコが死んでしまい、
酷く消沈している紅院を、純粋な同情心から慰めていたら、
その後、妙な偶然や謎勘違い展開が無数に重なり、
結果、とんとん拍子で紅院に惚れられてしまい、
さらに、なぜか、紅院の親父にも気に入られ、
そこからまた加速したトントン拍子で縁談が進んでしまい、
最終的には泣く泣く婚姻届に判を押すハメになった。
――あの奇妙なルートの事は、一際クソしんどい黒歴史として、砦の心に深い傷跡を残している。
……ゆえに、それ以降の砦は、
『紅院の好感度だけは極力稼がないようにする』
という、珍妙な努力をするハメになった。
――と、そこで、唐突に、
「「「「きゅぅううい! きゅぅうい!! きゅぅううい!!!」」」」
ルナ以外の携帯ドラゴンが、一斉に大声で鳴き始めた。
「GOO出現の警戒音やと?! はぁ?! なんでや? ツミカ、召喚の儀式をしとった奉仕種族は殲滅したんやろ?」
「間違いなく皆殺しにしたにゃぁ。そのうち一体は、それはもう残虐に殺してやったにゃぁ。腹からホルモンを引きずり出して、二重跳びの世界記録に挑戦してやったにゃぁ」
「そんなん聞いてへん、ってか、おどれ、何をやってんねん!」




