案件06:産業革命者 アルベルト・シュタイン
午後、異世界転生課の扉が勢いよく開いた。
「よーし! 今日も文明を一歩進めるぞ!」
入ってきたのは若き発明家の青年、アルベルト・シュタイン。眼鏡の奥に燃える野望の光。
「僕は産業革命者になりたい! 舗装道路、鉄道、自動車、発電所、何でも作ります!」
アルフレッドは書類を見ながら息をつく。
「……現代知識を異世界に持ち込むタイプですね。安全面や倫理面は……?」
アルベルトは胸を張る。
「もちろん、人々を豊かにするためです! 戦争や略奪には使いません」
「でも、蒸気機関や鉄道が急に出現したら……社会構造や国家予算は大丈夫か?」
「それは僕の能力で調整可能です。資源も人材も、計算済み!」
アルフレッドは頭を抱える。
「……いや、計算済みって言われてもね……」
書類に目を通し、転生先を指定する。
「場所はフロレンティア王国、都市中心部に研究所を設置。初期資金と助手を少数派遣」
「了解! まずは道路舗装から始めて、鉄道敷設、その後に発電所建設……」
「順序は安全と生活優先でお願いします……」
ホログラムの注意警告が赤く点滅する。
『現代知識による文明飛躍は、他国の権力バランスに影響する可能性あり』
アルフレッドは溜息をつく。
「……やっぱり、産業革命者は手強いな」
アルベルトは笑顔で扉に向かう。
「任せてください! この世界に文明の光を灯してみせます!」
光に包まれ、青年は異世界へと飛び立った。
机の上の書類を見つめながら、アルフレッドはぼそりと呟く。
「……さて、次はどんな無茶な希望者が来るんだろうな」
こうして、転生課の一日は、今日も書類と未来を背負った転生者たちに振り回されながら幕を閉じた。