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会敵(1)

 数百メートル先で騒ぎが起こっているのが聞こえた。


「もう遅い」と弘樹。「来るぞ!」


「本殿の脇よ!」と朱良。


 大木の横に赤黒い物体が浮いていた。次の瞬間、びゅんと物体が弘樹達の上を飛び越えて行った。何人かの隊員が叫び声をあげて倒れた。


「鬼だ!太刀を持っている!」と弘樹。


「あなたたちは伏せなさい!」と朱良。


 通り過ぎた鬼は境内入り口の鳥居脇で旋回し、向きを変えて弘樹達と正面で向き合った。


 身の丈二メートルはある大きな体が鳥居ほどの高さで宙に浮いている。甲冑を着込み、手に持つ太刀の刃渡りは六尺ほどもある。


 隊員が得物を手に取り、銃や弓矢の飛び道具を持つ者は鬼に向けて撃ったが、何の効果もなかった。


 鬼は再び隊員たちを次々と斬りつけながら上を飛び超えて、もといた本殿の脇の位置に戻った。人間が本殿を傷つける攻撃を避けていると知っているのだろう。


 すでに境内にいる隊員の半数は倒れていた。


「お前たちは早く伏せろ!」と弘樹は再び叫んだ。


「私が前衛をやるわ」と朱良が前に出た。


 弘樹は後ろに下がって刀を脇構えに構えた。


 境内で立っているのは弘樹と朱良のみとなり、鬼は二人に狙いを定めたようだった。


 鬼がびゅんという音を立てて朱良の頭上に迫る瞬間、朱良が体をひねりつつジャンプをし、鬼の袖をつかんでオーバーヘッドで鬼の頭を蹴りつけた。鬼はズドンと言う音とともに地面に落ち、その瞬間を逃さず弘樹が斬りつけた。鬼はとっさに太刀で受けて立ち上がったが、朱良が間合いを詰めて突きと蹴りの連続攻撃で態勢を崩した。


「姉さんさがって!」と弘樹。


 朱良が後ろに飛び去り、鬼が前に出て斬りつけてくる瞬間、弘樹が一気に間合いを詰めて脇構えからすりあげ、手甲と籠手の継目に刃を入れて左手首をさっと切り落とした。


 隊員から「おお!」と言うどよめきが起こった。鬼はそのまま背を向けて飛び去った。


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