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 たったの一週間しかない。

 処刑台に立つ自分の姿を想像すると、今まで体感したことのない不安に襲われた。

 死ぬ覚悟が全くもって、今の私にはない。

 もういっそのこと、絶望した方が楽だ。そっちの方が簡単だ。

 だけど、私は絶望を望んでいない。


「処刑日を聞いても、平然としていられるんだな」


 平然なんかじゃない。必死に震えを我慢しているだけだ。

 少し前まで私は王宮で過ごしていたのよ?

 それなのに、突然魔界で処刑される。魔界に来た理由など、誰も問わない。ただ、「人間だから」という理由だけで処刑が確定している。

 私が死ぬのもこの国のエンタメの一つに過ぎないのだろう。


「やりたいことリスト、全部できそうにないのが悔しいわ」


 私は静かにそう呟いた。


「は?」


 フードで表情は見えなかったが、顔を顰めているんだろうということは何となく声色から分かった。


「私はオリビア。貴方の名は?」

「…………ヴァリス」


 いきなり名を尋ねられたことに驚いたのか、彼が自分の名を言うまで少し時間がかかったが、ちゃんと答えてくれた。

 処刑日もわざわざ教えにきてくれたし、悪い魔族ではないのかもしれない。

 冷血で極悪非道な魔族しかいないと思っていたが、どうやら違うかもしれない。……そうやって、油断するのも良くないが、ヴァリスはどこか違う気がした。

 

 あ! 門番!


 こうやって話している内容を他の者に聞かれたらまずいかもしれない、と私は急いで門番の方へと視線を向けた。

 門番は気持ち良さそうに、立ちながら居眠りをしていた。


「お前以外、ぐっすり寝ているから大丈夫だ」


 ヴァリスの方が用意周到だった。

 というか、この地下牢にいる者たち全員眠らせることができるほどの魔力って…………。恐るべき魔族、なのか、それとも単にヴァリスが優秀過ぎるのか。

 けど、ここまでのことができるのに、パンの配布係だなんて……。

 なんだかミステリアスな少年ね。敵のはずの魔族なのに、今は彼しかまともに話してくれる相手はいない。


「処刑日を伝えにきてくれただけ?」

「ああ。それと確かめたいことがあってな」


 ヴァリスの声が急に低くなった。

 彼の鋭い視線を全身で感じる。まるで私の全てを見られているかのようだ。外も中身も、四方八方から見られている。

 私の何もかもを知られるような気がした。

 …………逃げたいのに、完全に逃げ場をなくされている状態。一体、彼は私の何を見ているのだろう。

 しばらくすると、黄色い瞳が揺れるのが分かった。何かに驚いたような目立った。その後に機嫌を損ねたのか、私を突き刺すように睨んだ。


「お前から放たれている『それ』はなんだ」

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