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私はそれを聞いた瞬間、その場に固まってしまった。
この遥か奥まで連なっている地下牢の者たちが全員処刑……?
その惨い事実に私は身の毛がよだつ。隣の様子は分厚い壁で全く分からないし、魔法がかけられていて、様子を探れない。だが、かなりの人数がいることは分かる。
人間だから殺されるのだ、と思っていたけれど、魔族同士でも容赦がないようだ。
…………なんてところに来てしまったのかしら。
さっきまで「なんとかしてここから出よう!」と思っていた気持ちが一気に沈んでいく。だけど、絶望に浸るにはまだ早い。
それに、そんな顔を彼らに見せてたまるものか。
「では、鉄格子の中にいる者たちは皆同士というわけね。少し心強くなったわ」
私は口角を上げて、門番に微笑む。
先ほどまで先端が鋭く尖った歯を見せて私を馬鹿にしていた表情が変わる。小さく舌打ちをしながら、「キモい女だぜ」と呟き、私から視線を外した。
…………そう言えば、あの宰相みたいな人、処刑法を色々と言っていたけれど、私はどの処刑法で殺されるのかしら。
というか、まだ処刑日も決まっていない。もうすぐなのだろうけど、具体的な日時は何も知らない。
ある日、突然言われるのだろうか。
明日の朝、起きたら、処刑台へと上がることになるのかもしれない。
そう思うと、急に膨大な恐怖に襲われた。私は何もせずにこのまま人生を終えてしまうのだ。
こんな閉鎖的な空間でよくまだ私の精神が保っていると思う。心細い状況など今まで経験したことがなかった。
一度冷静に考えないと…………。
私はさっきまでの勢いを落ち着かせて、牢屋の端っこへと移動した。壁にもたれながら座り込み、目を瞑る。
目を瞑りながら、自分がしたいことを考えた。
やりたいことリスト。…………昔、王宮で書いたことがある。全て叶わないと知り、諦めた。
頭の中で、一つずつ思い出していく。
1・王宮を一人で出る
これは達成した。もはや、王宮どころじゃなく、人間界を抜け出してしまった。
2・ダンスのレッスンをサボる
これは無理だったもの。パス!
3・街へ出る
…………お父様にお願いして、一度だけお忍びで街へと赴いたことがある。……パスでいっか。
4・自分の好きな魔法を見つける
これはあまりにも魔法が上手くできなくて、魔法を嫌いになりかけた時に立てた内容。
…………これは結局見つけなかった。段々、魔法に対しての熱意も失われてしまって、今ではへなちょこ魔法しか使えない。
……なんて酷い王女なのかしら。…………次よ、次!
5・友達をつくる
こんな馬鹿げたことも書いていた。
………………友達、か。
「おい! 飯だ!」
その声に私はハッと我に返った。