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一応女の入り口と男の入り口で分かれてはいる。
長い廊下を歩き、分岐点まで来た。天井からボロボロの木の板がぶら下がっている。
女と男で分かれて進んでいくが、圧倒的に男の方が多い。
「ぼーっとしてないで、とっとと進め」
分岐点の所に立っていた、衛兵に睨まれて、私は逃げるように足を進めた。
ここにいる死刑囚の九割が男で二割が女ってところかしら……。視界に入ってくる限り、この道には数名しかいない。
「あなた、人間?」
突然後ろから声をかけられた。
私は声の主の方へと視線を向けた。私より背の高い綺麗な顔をした魔族の女が私を不思議そうに見ていた。
その引き込まれるような藍色の瞳を持つ左目の下にはホクロが色気を醸し出していた。
この不衛生で異臭が放たれている場所で、彼女は良い匂いがした。
「ちょっと? 言葉通じてるわよね?」
「あ、ええ。そう、人間」
私は短くそう答えた。
まだ彼女が私に話しかけてくれているということの実感が湧かなかった。
……まって、人間って即答しちゃったけど良かったの? 狙ってくださいって言っているようなものじゃない? いや、でも、においで人間ってバレるよね?
「そんな不安そうな顔しないで、食べたりしないよ。私はそんな野蛮じゃない」
その言葉に彼女のプライドを感じた気がした。
私をそこらの魔族と一緒にするな、と言っているような口調だった。
「私も野蛮じゃないから、貴女を食べたりなんかしないわ」
私がそう言い返すと、彼女は少し目を丸くした後、声を出して笑った。
「あなた、良いわね」
愉快に笑う彼女を見ながら、敵意は向けられていないことを確認できた。
魔族のツボってよく分からない……。今の何がそんなに面白かったのかしら。
「私はリノ、貴女は?」
「オリビア」
「オリビア、よろしくね。……ようこそ、地獄のシャワールームへ」
目の前に石が積み重なった大きな壁が現れた。リノは右の方にあった赤茶色の石を一つ押す。その瞬間、石と石が擦れる耳が痛くなるような音がその場に響いた。ゴゴゴゴォと石の壁が開く。
「男の方は今日は何人が死ぬかしらっ」
彼女は楽しそうにそう言って、中へと入って行った。
……死ぬ。サバイバルシャワー過ぎる。……改めて、なんてところに来てしまったのかしら。
私はそんなことを思いながら、息を深く吸い込み、気を引き締めて彼女について行った。




