お見送り
なんであんな事をしてしまったのだろう
後悔先に立たずとはよく言ったもので、自分のミスでダルクを怪我させてしまった。
しかし後悔ばかりしてても何も変わらない。
前世でブラック企業で働いていればこういう事は山程あった。
失敗した時は謝る、戻す、改善する。それ以外は何も役に立たない。成功するよりも失敗したときのほうがシンプルまである。
ピッパちゃんとダルクにはしっかり謝罪した。
改善については、自分の力量を再確認し、過信しない。そして力任せにならないよう馬に合わせた騎乗が出来る様に努力する
謝罪と改善はこれでクリア。まぁ改善に関してはまだまだ時間は掛かるだろうけど焦っても仕方がない。成長期はとっくに終わったおじさんである。身体を壊したら元も子もない。
それに一応領主で貴族である。みんなが平和に生活出来るようにしなくちゃいけない。倒れてる場合でない。
さて後は戻すだが
前世の知識を元にいろんな事をやってみた。
冷感ハップを作って粘土に混ぜて痛い脚に塗ってみたり、テーピングの様に伸縮性のある包帯を作り巻いて見たり、大きめのプールを作って泳がせてみたり
と考えられる事を全て試してみた
2ヶ月後
「、、、こんなに早く良くなるとは思わなかったです。」
痛みを見せず軽めの運動するダルクを見てそんな感想を口にするピッパちゃん
「本当に?良かったぁ。いや、本当にすいませんでした。ピッパちゃんちょっと跨ってもらえるかな?」
わかりましたと言ってダルクに跨り馬場に出て調教をする。
ダカタッダカタッ
休み明けとあって軽めの調教だったが軽快なフットワークを見せるダルク
「、、、以前より良くなってます」
狐に抓まれた様な表情を見せるピッパちゃん
それを見てほっと胸を撫で下ろしダルクを労い、また足元をケアするためにアイシングをする
「これならセリも出れそうですね」
「本当に!?いやぁ実は少し焦ってたんだよねー。だってあんな凄いレースを見せられたら。。。」
そう、つい先日サークルオブザイヤーがデビューしたのだが他馬を寄せ付けない圧巻のレースだった。
スタートからのテン(ダッシュ)も早く、すぐに先頭に立つやいなや、一度も影すら踏ませず、直線では突き放しゴール。
通常なら二着から離れた距離を馬の大きさで換算し、1馬身2馬身などと着差を発表するのだが、余りにも離しすぎて運営側からどうします?と聞かれてしまったので一言「大差」と伝えたら
『サークルオブザイヤー衝撃の大差勝ちデビュー!』
という見出しが並んだ。
「オグリスさんサークルオブザイヤーのレース見ました?」
「見た見た!大差の圧勝だったね」
「次走は2ヶ月後のアルマリンカップだろ?必勝だな!」
「いやいや、それじゃ全然儲からないし動物のやることだから絶対はないですよ」
「競馬は良く分からないけど、今度新作の『たこ焼き』って言うのが売られるらしいよ?絶対食べたい。」
「それは聞き捨てならないですね」
「「「「いずれせよ2ヶ月後が楽しみだな!」」」」
ダルクのセリの登録の為にピッパちゃんと王都に行くと以前街にちょっかいを掛けてきた4馬鹿がそんな事を話しながら自分の横を通り過ぎた。
「今の人達って、、、」
「うん、以前街にちょっかい掛けてきた人達だね。まぁ根っからの悪人ってわけでもないしほっとこ」
ちなみにあいつら以外にも街では競馬の話で持ちきりで、ここ2年でものすごい人気となって競馬場もどんどん立派になってスタンドなど出来た。
そして競馬場も2ヶ月毎に開催。その度お祭りの様に多くの人が集まり盛り上がりを見せている。そして年に一回のアルマリンカップは20万人以上の人が訪れ、馬券は国の財源の10%を占めている
もう単なる娯楽ではなく一つの文化になりつつある。
「それにしても競馬、凄い人気ですね。レース2ヶ月後なのにみんなその話で持ちきりですよ」
「そうだね、これは絶対勝ちたいね」
「はいっ!」
静かな闘志を燃やしつつ、王都を後にする
そして一ヶ月後、セリに参加する為にピッパちゃんとダルクと共に再び王都に向かう。
バックには金貨25000枚およそ25億円位詰め込んだ
「それではミルフィアさんキッツ君行ってきます」
「いってらしゃいませ」
「ご武運を」
と見送られパール街を出発しようとすると早朝にも関わらず街のみんなが訪れ出迎えてくれた
「シュシュシュン!いよいよだな!」
「主、幸運をお祈りします」
「皆さんお見送りありがとうございます!競り落とせるか分かりませんが頑張ってきます!」
「なに弱気な事言ってんだい!絶対競り落としてくるんだよ!ほら、これも持っていきな!」
と、ズシッと重みのある袋を渡される
「これは?」
「みんなで貯めた金貨5000枚さね。あんた達がこの2年間ずっと頑張ってるの見てきてるし、ダルクはもうあんた達だけの夢じゃない。私達パール街の夢さね」
と言ってエルラさんが背中をバシッと叩いてきた
「そんなこんな大金受け取れません」
「あんたが来る前この街は本当に元気がなかった。もちろんお金も。けどあんたが一杯努力して街を救い、そして豊かにしてくれた。それに比べたら安いもんさね。いいから黙って受けとんな」
「そそそそうだぞ!競り落としてバーベキュー!レレレレースに勝ってバーベキューだ!」
おおっ!と盛り上がるみんな
本当にバーベキュー好きのパーリーピーポになったな
それとザキオさん、レレレって昭和のアニメみたいです
「ありがとうございます、ではありがたく受け取ります」
その光景が可笑しくて笑顔で受け取ると、つぅーと涙が溢れた
「おかしな領主様だね。笑うのも泣くのもレース終わったあとさね。ささっ行っといで!」
と再度背中をバシッ叩かれ見送られた
「絶対、競り落としましょうね」
「うん、、、うん、、、」
王都までの道中。ずっと目頭が熱いままだった
明けましておめでとうございます!
今年も宜しくお願い致します
更新遅れて申し訳ありません。師走、忙しい。師匠も走る位だしね。
また4馬鹿を出してしまいました。ちなみに4馬鹿の内の1人が前の話の感想に「続きまだー?」と書き込んだあわちんさんです。美味しいもの大好きの無邪気なグルメ家です。かけがえのない親友の1人です。
ちなみにダルクにあったトラブルや治療はほぼ実体験です。自分のせいで怪我させてしまって治療に明け暮れました。運よくその馬はデビューすることが出来、新馬戦で勝利することが出来ました。あの時の惨めさ、そして喜びは今でも自分の糧となり、他の馬の為に捧げております。
にしても、文章にするの難しいすぎんのよねー。小説家は本当に凄い!(語彙力)




