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馴致!

写真機は貴族の趣向品としてそこそこ売れた。

しかし大量生産が難しく基本パール街の完全受注生産となってしまった。


それは何故かと言うと、構造やら理論が余りにも斬新過ぎて造る職人さん達が理解しきれないからである。


今の所全て理解してもらえたのはキッツ君だけで、キッツ君はほとんど毎日職人さん達の所に出ずっぱりになっている。



と、なると大変になるのはパール街事務所であり、絶賛過労死寸前デスマーチである。


「シュンさん。。。写真機の受注が15件来ました。。。あと、王都で写真の展示会があるので開会式に出席の要請が来てます。。。確認お願いします。。。」


ポジティブで定評のあるピッパちゃんが連日の残業で目の下にクマを作り元気のない声で報告してくる。



「うわぁ。。。これで200件溜まってるよ。。。展示会はお断りの手紙書いて。。。」


「いえ、展示会の主催者はミリオン伯爵なので流石に断る訳には。。。」


「くそっ!ホント貴族社会くそっ!伯爵がそんなに偉いのかよっ!」


「少なからず子爵よりは偉いです〜。ハゲ、、、じゃなかった、シュン子爵様が作った写真機なんですから〜文句言わず行って来てください〜。。。」


酷いっ!ハゲだなんてっ!

。。。まだハゲてないよね?大丈夫だよね?


ちなみにハゲは周りの人間1人からでもそれとなく言われた場合、ゴキブリと一緒で周りの人間100人以上はハゲだなって思われていると思っておいて間違いない。ソースは作者。床屋美容院の言うことはまじで当てにならんから。


まだ大丈夫だよね?という視線をピッパちゃんに送ると視線を逸らされた。


はいー。ハゲ確定ー。

まぁどっかのシャンプーに『諦めるなよ男だろ』ってフレーズあったけど、僕は男らしくきっぱりと諦める事にした。


「てかキッツの奴、どれだけ優秀だったの?あいつがいなくなっただけでこんなに忙しくなる?なぁぜなぁぜ?」


「ハゲ子爵が言っても可愛くないですから〜。そもそもの原因はハゲのせいですから〜」


「そうですね!すいませんでしたー!あーこんな時はサウナ!サウナ行こう!」


「。。。今サウナ行ったらコロしますよ?」


「。。。すいません」


みんな過労のせいか言葉が悪くなってしまっている。


あー早くダルクに会いたい!会いた過ぎて震える。いや、この震えは過労のせいか。手が震えて箸とか落とすようになったらアル中か過労死寸前だから気をつけろ




そう、話は変わるが、今唯一外出を許されているのはダルクの世話をする時だけである。



ダルクもスクスクと成長し1歳と半年を過ぎた辺りにはお父さんのジャンヌに負けずとも劣らない立派な馬に成長した。



そして最近乗りの馴致も開始した。(第9話始めての乗馬参照) 

乗りの馴致とは人間が馬の上に跨って思い通りに動いて貰えるようにする為の作業だが、前はピッパちゃんが馬と会話出来ていたので彼女が一言かければ馬は大人しく言う事を聞いてくれてあっという間に終わっていたのだが今はそういうわけにはいかない


一瞬の慢心は怪我に繋がり、そして感情的になりすぎて半ば強引に行えば馬は反発し暴れたり、何が正しいのか分からなくなり全く思い通りにいかなくなったりする。



例えば人間に

「右手上げて!」と言ってお尻を叩くとしよう。

それを何度か繰り返し右手を上げる度に褒めたりご褒美をあげていれば、右手上げてと言わずにお尻叩いただけで右手を上げるようになるだろう。失敗したとしても違うと教えたり怒ったりすれば自ずとできるようになるばすである。


しかしここに

言葉を交わすなと言われたらどうだろうか?難易度は跳ね上がるはずである。突然お尻叩たいた日には殴られる可能性もある。


そこを恐怖心を取り除きながら馬が乗り手のやってほしい事を馬がやりやすい様に促しながら教え込んでいくのが乗り馴致である。もしも間違った事を教え込んでしまったら「さっきまでこれで良かったじゃないですかー!」と言わんばかりに抵抗されてまたやり直し。


しかもそれが400キロを超える馬相手である。失敗したら大怪我する可能性もある


感覚で言うなら産まれて数ヶ月のおっぱいあげてる赤ちゃんがボブ・サップ位な感覚だろうか?下手したらおっぱいもがれたり溝うち殴られたら呼吸出来なくなる位痛いだろう。



ダルクは基本的に人懐っこく牡馬らしく物怖じしない性格だが、やはり慎重に慎重に馴致をした。


ただ元とは言え馬とお話出来たピッパちゃん!

ダルクの様子を伺いながらテキパキと馴致をしていき数日後には自分が跨っても素直に指示を理解し動けるようになっていた!


競馬博物館で『馬と話す男モンティロバーツ』なんて本があったが


動物と話せるとかドラえもんの世界かよ


と眉唾物の様に見ていたが、馬の言葉が分からなくなったと言っていたピッパちゃんの馴致を見ていると、言葉のやり取りが会話ではなく、自分と馬との意思疎通が出来る事が会話なんだなぁと思い知らされた。


モンティロバーツさんあなたの講習会受けてみたかったです。。。




そして馴致を終え以前から作っておいた一周1000メートル程の走路で走られてみたのだが、そこからはとんでもないじゃじゃ馬だった。


まずはとてつもなく速い。とにかく速い。

とにかく前に前にと行きたい性格で、競りかけられそうになるとそこから加速し突き放す。

前に走っている馬がいると加速し続け抜き去る。

その間全く人の言う事は聞かない。抑えようにも抑えきれない。ただゴール板を過ぎると減速し始めるという正に競馬を走るために生まれてきた読んで地のごとく競走馬


走っている時は俺様の言う事を聞いて黙って跨っておけばいいんだよ!と言わんばかりだった。



流石のピッパちゃんのでも半分程度しか思いも通りに調教出来ない。


「私でもなかなか難しいですね。まぁダルクの思い通りに走らせてるだけでレースには勝てそうな気もしますが。。。」


とピッパちゃんも少しお手上げ状態である。


自分も秘めたる才能を信じて跨ってみたものの、数秒で暴走し、2000メートル程しがみついていたが落馬。その後すぐに減速、Uターンして自分の方に戻っ

てょきて見下された。鼻を近づけてきて心配してるのかと思ったら、ブルルッと鼻水を吹きかけられる。


ぐぬぬ。。。覚えてろよ〜いずれ乗りこなしてやるからなぁ〜(今後シュンが乗りこなす事はないです)



そんな感じでピッパちゃんと四苦八苦しながら、何とかダルクを乗りこなそうと頑張ってはみたものの、ピッパちゃんが二回に一回乗りこなせるかなぁ位までにしかならずダルクのセリ上場日が近づいてくるのだった。


ここで書いたのの何倍も馴致というものは難しいです。自分が出来ないだけなのに馬のせいにしてムカついたりしてしまうこともあります。(まだまだ未熟者です)


たまにネットニュースとかで競走馬に八つ当たりしたジョッキーや厩務員に対して騎乗停止処分した。


なんてニュースを耳にします。

僕はホースマンとして恥ずかしく情けなくもあるんですが、そういう行為をしてしまう人の気持ちが理解出来てしまいます。

書き込みなんかは

そんな事する人は馬に関わらないでほしい。

とか

人として終わってる。馬が可哀想

なんてコメントがほとんどです。

その通りだと思うし、この仕事に就くまでは私もそちら側でした。

しかし今の私としては悲しい出来事だな。と嘆くことしか出来ません。



分かりやすく昨今問題視されている。介護現場の虐待に置き換えてみましょう。


人手不足で残業残業。安月給で働けど働けど我が生活楽にならず。

友達とのお誘いもほとんど参加出来ず、それでも今日久しぶり業務もこなせそうなので夜から友達との飲み会に行く予定がありました。

一生懸命働いて頭をフル回転で効率的に頑張り何とか間に合いそうな感じだったのに、最後の患者がお漏らしをしてしまいペットシーツを変えなくてはならなくなりました。


ペットシーツを変えようとしたら患者は何故か激昂し

「俺は漏らしていない!お前がやったんだろ!」

などと騒ぎたて自分の事を殴りかかって来ました。その後上司を呼ばれ、自分は何も悪くないのに説教され、患者の家族まで呼ばれ謝罪させらる。もちろん残業になり友達との飲み会も行けなくなりました。


終電で帰り六畳一間のアパートに帰りコンビニ弁当を食べ殴られた頬を庇いながら六時間程寝て、また職場に行き、朝礼で昨日の事をみんなの前で謝罪させられ、また昨日の患者に殴られる


そんな毎日を1年続けて見てください。それでもお年寄りが好きだと尊いと思い続けられるでしょうか?


嫌になったら辞めたらいいじゃんって思うかも知れませんが、そんな職場常に人手不足で中々辞めれません。簡単に辞めれないから退職代行なんてサービスがあるのです。


お年寄りから受けるストレスだけなら、もとよりお年寄りが嫌いで入社した訳ではないでしょうから我慢出来るのです。

改善すべきは、労働に見合う賃金と休日。

そして、パワハラを無くし、お客様よりも従業員に寄り添う職場環境。

それがあれば入社する前の好きだった気持ちを持ち続けられ、悲しい出来事も無くなると自分は思います。


まぁそんな職場でも好きという気持ちを持ち続け夢を叶える成功者はいて、甘えといえば甘えなんですが


けど辞めていった数多くの若い子達には何とかしてあげれなかったのかなぁ。反省し続ける毎日です。



長々と長文失礼しました。

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