領主邸にて
突然執事のウシュバさんに連れられて領主邸に行くことに。
ギター教えてあげるって約束してた彼、なんとも言えない顔してたけど大丈夫かな?
って今はそれどころじゃなーい!突然街で一番偉い人の家に行くのだ。こんなピンチは前世で大手の会社に営業行くとき以来だ
「こちらでございます」
ウシュバさんに案内された領主邸はさほど大きくはないが隅々まで手入れが行き届いていて、とても品があり贅を尽くした様な嫌らしさがなくとても居心地の良い空間を作り上げていた
会う前からここの家主の人柄が伺えるとても好印象な邸宅だった
「失礼します、街で噂の吟遊詩人様をお連れしました。」
「ご苦労、入ってくれたまえ」
扉が開かれそこに立っていたのは、とても凛とした顔立ちの良く通る声をした仕事出来る人の典型的な風貌の中年男性。ただどこか疲れた目をしていた
「お初にお目にかかります。私はこの街の領主でサクシードと申します。貴方様様が吟遊詩人様でごさいますか?」
ウシュバさんもそうだけどさっきから吟遊詩人って自分のこと?
「初めてまして。私はシュンと申します。それで先程から吟遊詩人と申されておりますが吟遊詩人とはいったい?」
「あぁ失礼、アルマリン王国のおとぎ話の様な伝承では『街に物珍しい道具を使い音を奏でるもの現れた時、その街では豊かな発展と幸福がもたらされる。其の者を吟遊詩人と呼ぶ』と言う話がありまして」
あぁそれで
「あぁそれで。吟遊詩人かどうかはわかりませんが確かにギターを使って街で音を出してるのは自分でございます。」
「おお!やはり!もし良かったら今ここでやっては貰えないだろうか!?」
えぇ!今までここで!心の準備ができてないよ!
しかし少し興奮ぎみのサクシードさんを見るとこれは演奏せざるを得ないな、と腹をくくりギターを準備すると唐突に扉が開かれる
「申し上げます!」
汗だくの青年が血相をかえて入ってきた
「なんだお客人の前だぞ。」
「申し訳ありません。ですが・・・」
「なんだ申してみよ」
「北の方角からノーザン帝国と思われる一団がこちらに進行しております!その数1000以上」
「何っ!ちなみに今はどの辺りだ!?」
「シンボリ峠を越えた辺りまで進行中、明日辺りにはこの街まで。。。」
「明日だと!?あぁ最悪だ。。。明日だと今から王都に援軍要請にどれだけ脚の早いものが向かっても往復2日はかかるというのに。。。先の戦で自警団も半分以上無くし100も満たないというのに。。。この街を放棄して王都に住民を避難させるのが優先か。。。」
その会話を聞いて違和感を覚える
「あのー。。。お取り込み中申し訳ないのですが」
「あぁ吟遊詩人様。先程の話は無かった事で、申し訳ない!」
「いえ、そうではなくて・・・馬を使わないのですか?」
「馬?馬など物を運ぶか畑を耕すかしか使えないだろう?」
やはり
前世で社会の先生が言っていた
「人類の3大発明は、火薬、羅針盤、活版印刷と言われてますが、、、先生は『ハミ』だと思うんだよなぁ。」
「馬に跨り向かうのです」
「馬に跨った所で馬など暴れるか人の思う方に向かわないだろう。」
「私に考えがございます!少々お待ち下さい!」
そう言い残して領主邸を飛び出した。